サイトカインなど様々な刺激によって活性化されるシグナル伝達分子STAT3の刺激依存的なタンパク質修飾変化がSTAT3分子の機能にどう影響するのか、特に下流の細胞老化関連現象にどう影響するか、更にはタンパク質修飾が制御点となりうるかを解明していく一環として、質量分析機を用いた解析により新規の可能性があるSTAT3の修飾部位を同定した。このSTAT3の新規の修飾変化を評価できる系を構築することにより、修飾変化が情報伝達系における分子群の活性化・不活性化にどう影響するのかを調べることができ、タンパク質修飾に寄与する分子を同定でき、下流の細胞老化関連現象に至るまでのエフェクター分子の活性化にいたるまでの機序が明らかにされ、制御法開発への評価系になるとも考えた。質量分析機によって定量的に新規のSTAT3タンパク修飾変化を捉えることは技術的に困難と思われた。そこで、新規STAT3修飾部位を特異的に認識する抗体の作成に重点をおいた。修飾された部位を含むペプチドを設計・合成し、キャリアに結合させた後に家兎に対して複数回免疫した。部分採血した血清中の抗体価の上昇を確認した後、全採血を行った。更に非修飾ペプチドを用いて未修飾部位認識抗体を除去し、STAT3の修飾された部位を含むペプチドを用いたアフィニティークロマトグラフィーにより特異抗体の精製を行った。精製抗体はウェスタンブロッテングには使用できなかったが、ドットブロットにおいて特異性を確認でき使用できるものとして判断した。HepG2細胞において非刺激・IL-6刺激条件下で細胞抽出液を調製し、ドットブロット法を用いて新規STAT3修飾部位の修飾変化が捉えられるかを確認した。バックグランドが高いため更にS/N比が高くなる最適条件の検討を継続中。
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