研究課題
昨年度はVDR欠損マウスの肝臓において全免疫細胞数、ナチュラルキラー(NK)細胞の活性化マーカーであるCD69及びNKT細胞が増加傾向を示すこと、単離した肝免疫細胞にリポ多糖(LPS)刺激後IL-6, TNFなどの発現がVDR欠損細胞でわずかに増加傾向を示すことを報告したが、本年度は肝免疫細胞の炎症反応に対するVDRの影響をさらに詳細に検討した。1.野生型及びVDR欠損マウスから単離した肝臓免疫細胞にToll様受容体9リガンドであるCpG-DNAを添加し、IL-6, TNFなどの炎症性サイトカインの発現を評価したが、VDR欠損の影響は認めなかった。2.上記1のin vitroにおける検討でVDR欠損による明確な変化が認められなかったため、野生型またはVDR欠損マウスにCpG-DNA投与による急性肝障害を惹起させ、in vivoにおける効果を検討した。血中トランスアミラーゼ値、TNF産生量を評価したところ、野生型と比較しVDR欠損ではむしろ減弱した。3.野生型及びVDR欠損マウスから単離した肝臓免疫細胞にNKT細胞選択的リガンドであるα-ガラクトシルセラミド(α-GalCer)を添加し、IL-4やIFNγの発現を評価した。VDR欠損細胞におけるα-GalCer誘導性サイトカイン発現はむしろ増加傾向が認められ、他の研究者による報告(Yu et al, PNAS, 2008)とは異なっていた。以上のVDR欠損マウス由来肝臓免疫細胞を用いた検討により、in vitro培養系においては炎症反応に対するKupffer細胞(肝マクロファージ)やNKT細胞などの免疫細胞の応答性について明らかな変化は認められなかった。一方、in vivo肝障害モデルにおいてはVDR欠損において炎症反応はむしろ抑制傾向にあり、マウスの飼育環境などの外的要因によりVDR欠損マウスにおいて何らかの炎症抑制メカニズムが働くことが示唆された。4.選択的VDRモジュレーターの化合物の開発を継続した。
3: やや遅れている
本年度の計画では、肝障害モデルマウスを構築し、ビタミンD3投与による薬理効果もしくはVDR欠損の影響を検討する予定であった。ところが、未刺激の状態においてVDR欠損マウスの肝臓でNKT細胞の減少が観察されないなど過去の報告と異なる表現型を示したため、まずはin vitroの検討を行い、肝臓免疫細胞の炎症反応に対するVDRの影響を詳細に調べる必要があると考えた。その結果、単離した細胞におけるLPS、CpG-DNA誘導性サイトカイン産生能にVDR欠損は影響しないことが示された。また、α-GalCerを添加しNKT細胞を刺激したところ、IL-4などのサイトカイン発現はむしろ増加傾向を示した。さらに、CpG-DNA投与によるin vivo肝障害モデルの検討を実施したところ、肝障害はVDR欠損でむしろ減弱した。以上のように、各薬剤に対するVDR欠損細胞の応答性は過去の報告とは異なる結果を示したため、詳細な考察を加えながら計画を進めている。
他の研究者の報告とは異なるが、我々の報告(Ishizawa et al, PloS ONE, 2012)と合致する実験結果であった。VDR欠損マウスを用いた検討においては動物の飼育環境が影響することが示唆されたため、マウスに抗生剤投与を行い腸内細菌の影響を除外できる実験系を構築し、再度マウスの肝臓免疫細胞組成の比較、サイトカイン産生能の評価、肝障害モデルの検討を行う。
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Journal of Medicinal Chemistry
巻: 57 ページ: 4073-4087
10.1021/jm401989c