KRAS遺伝子は肺癌など様々な癌で活性化変異を起こしている。そこで、癌原性KRAS変異をノックインした非癌ヒト気管支上皮細胞株を用いて変異KRAS遺伝子の機能を解析した。変異KRASは、細胞の形態を癌細胞様に変化させ、足場非依存性増殖能を与え、細胞の運動能、マトリゲル浸潤能を亢進させていた。また細胞内で増殖シグナルを核に伝えるMEK-ERK経路を過剰活性化していた。遺伝子およびタンパク質の網羅的発現解析の結果、これらの細胞特性の変化を説明しうる分子の発現量の変化を見出した。本研究の成果は変異KRASの機能の全容解明に貢献し、将来的にはKRAS変異癌の治療薬開発に道を開くものと期待される。
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