研究課題
本申請研究では脳内神経炎症が全身の代謝に異常をもたらすことを実証し、さらにその分子・神経メカニズムについて中枢と末梢の臓器間の機能連関を含めて解明することにより(フィジオーム研究)、神経-免疫‐エネルギー代謝に関する新しい概念を確立することを目的としている。これまでに水浸疲労負荷ラットにおいて、血漿あるいは肝臓のメタボローム解析からミトコンドリアの中心的機能であるTCA回路の中間代謝物の特徴的な変化のパターンを見いだし、疲労特有の代謝回路の一部を成すことを示した。特に、TCA回路前半の中間代謝物が減少することから、そのメカニズムとして、クエン酸からシスアコニット酸を介してイソクエン酸へと変換する酵素(アコニターゼ)の活性低下が強く疑われた。そこで、アコニターゼ活性の阻害剤であるモノフルオロ酢酸ナトリウム(MFA)を用いてアコニターゼ活性を低下させた動物モデルを作製し、各組織中のエネルギー代謝の変化と自発活動の変化との関連を調べた。その結果、脳におけるアコニターゼ活性の抑制は、炎症性サイトカイン産生を引き起こし、さらに動物の自発行動量を低下させることがわかった。現在、脳内における炎症性サイトカイン産生(神経炎症)が末梢臓器の代謝にどのような影響を、どんなメカニズムを介して与えるのかを明らかにするため、神経炎症モデル動物を作出し、末梢臓器の代謝解析を実施している。特に、中枢神経炎症が自律神経機能の変調を介して末梢におけるエネルギー代謝を低下させるとの仮説を立て、自由行動下に心拍を記録し、心拍変動解析から自律神経機能を評価しながら、代謝解析を実施している。
2: おおむね順調に進展している
神経炎症モデル動物の作出や自由行動下における自律神経測定システムの構築は既に完了し、実際にデータ取得実験を開始している。また、疲労特有の代謝においてみられた特徴的なTCA回路中間代謝物の変化を薬物を利用して再現し、神経-免疫-代謝連関に関する貴重なデータを得ており、当初の予定に従って進められているものと考える。
脳内神経炎症モデル動物において、自律神経機能の変化と肝臓など末梢臓器のエネルギー代謝との機能連関を明らかにした上で、モノフルオロ酢酸ナトリウムの投与などで作出した疲労モデルにおいても、脳内神経炎症を抑制することで、自由行動量の低下が回復するかどうかを検証する。
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