研究課題
本申請研究では脳内神経炎症と全身の代謝異常との関係を明らかにし、さらにその分子・神経メカニズムについて中枢と末梢の臓器間の機能連関を含めて解明することにより、神経-免疫‐エネルギー代謝に関する新しい概念を確立することを目的とする。特に、断眠疲労負荷したラットや、エネルギー代謝を抑制したラット等を対象に研究を実施した。断眠疲労負荷ラットは、深さ2.2 cmの水を張ったケージにて5日間飼育することで作成した。一方、エネルギー代謝抑制ラットは、ミトコンドリアにあるTCA回路の初段階反応を担うアコニターゼの阻害剤・モノフルオロ酢酸を投与することで作成した。断眠疲労負荷ラットでは、肝臓においてTCA回路・尿素回路・グルタミン代謝系に大きな代謝変化を検出し、尿素回路内オルニチンからグルタミン代謝を介してTCA回路へ流れ込む「疲労代謝」が誘導されていることがわかった。さらに、本疲労代謝はタンパク質のコハク酸化を通して炎症性サイトカイン産生を惹起し、組織に炎症を引き起こすことも明らかとなった。また、光学顕微鏡ならびに電子顕微鏡による観察の結果、疲労負荷した動物の肝臓において、コラーゲン線維の増生による線維化も確認され、疲労は臓器の炎症から線維化まで引き起こす慢性疾患へのアイドリング状態であることがわかった。一方、エネルギー代謝抑制ラットにおいては、断眠疲労負荷ラット類似の代謝変化が見られること、さらに脳内の炎症性サイトカイン発現も引き起こされることがわかった。末梢の組織炎症は炎症性サイトカインの血液循環を介して中枢神経組織でも神経炎症を惹起すること、さらに中枢神経炎症は自律神経機能の変化を介して末梢臓器の機能異常を引き起こすことから、慢性疲労が中枢神経炎症も含めた全身代謝・炎症病態であることが明らかとなった。
すべて 2015 その他
すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 5件、 オープンアクセス 3件、 謝辞記載あり 2件) 学会発表 (18件) (うち国際学会 3件、 招待講演 7件) 備考 (1件)
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