研究課題/領域番号 |
25460405
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研究機関 | 信州大学 |
研究代表者 |
古庄 知己 信州大学, 学術研究院医学系(医学部附属病院), 准教授 (90276311)
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研究分担者 |
三宅 紀子 横浜市立大学, 医学研究科, 准教授 (40523494)
涌井 敬子 信州大学, 学術研究院医学系, 講師 (50324249)
福嶋 義光 信州大学, 学術研究院医学系, 教授 (70273084)
松本 直通 横浜市立大学, 医学研究科, 教授 (80325638)
籏持 淳 獨協医科大学, 医学部, 教授 (90172923)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | エーラスダンロス症候群 / 新規病型 / 結合組織疾患 / 結合組織疾患 / 次世代シーケンス / 候補遺伝子解析 / 全エクソーム解析 / 国際情報交換 |
研究実績の概要 |
エーラスダンロス症候群(Ehlers-Danlos症候群;EDS)は、皮膚・関節の過伸展性、各種組織の脆弱性を特徴とする先天性疾患の総称であり、6つの大病型およびその他の病型に分類されている。研究代表者らは、これまでに新規病型(D4ST1-deficient EDS;DDEDS)を発見するとともに、既知の病型に属さない症例群が他にも多数存在することを指摘した。「古典型EDS類似の皮膚過伸展性・脆弱性、関節過伸展性・反復性脱臼を呈するが、早期発症重症後側彎および子宮内発育不全を合併する症例群(A)」、「下肢の痙性、発達障害を伴い、急速進行性の経過をたどる関節型EDS類似の症例群(B)」、「血管型EDS類似の血管および腸管脆弱性を有するが、Ⅲ型コラーゲンの異常が検出されない症例群(C)」、「DDEDS類似の症状(先天性多発関節拘縮など)を有するが、CHST14変異が検出されない症例群(D)」などである。 本研究は、全国から収集したEDSを中心とする遺伝性結合組織疾患症例の臨床的分析および次世代シーケンサを用いた網羅的遺伝子解析を通じ、新規EDS病型を発見し、その疾患概念を確立することを目的としている。 平成26年度、独自に構築した一次スクリーニング用次世代シーケンス候補遺伝子解析システム(EDS各病型及び類縁結合組織疾患の原因遺伝子を搭載)をさらに発展させた。これまでに、臨床症状からEDS含め遺伝性結合組織疾患が疑われる122症例を解析し、40症例において病的変異が検出され、Sanger法により確認された。症候群Aに分類され、ともにCOL5A2遺伝子の変異が検出された2症例について詳細な臨床的検討を行い、顔貌および皮膚・骨格症状がきわめて類似した特異な古典型EDSのサブタイプであることを明らかにした。 症候群B、Dの症例に対して、二次スクリーニングである全エクソーム解析を行ったが、現時点で病的変異は同定できていない。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
平成26年度、臨床的探索としては、症例群A~Dを中心に患者収集を継続、詳細に臨床情報を分析し、新規の病型といえるかを検討することを目標とした。分子遺伝学的探索としては、平成25年度に構築したion PGMTMシーケンサによる一次遺伝子スクリーニング体制(既知のEDS病型および類縁結合組織疾患の原因遺伝子パネル)を維持・発展させることを目標とした。 臨床的探索としては、これまでに症例群Aを3症例、症例群Bを6症例、症例群Cを7症例、症例群Dを8症例など122症例の臨床症状及びゲノムDNAを入手、予定通りの進展状況である。 分子遺伝学的探索としては、予定通り、ion PGMTMを用いた網羅的候補遺伝子解析システムを維持・発展させた。しかし、本解析におけるプライマー設計ではカバーしえない領域があることが判明し、当該部位のSangerシーケンス体制を構築した。これにより、エクソン単位のコピー数異常や調節領域の変異といった例外的変異を除き検出可能となり、解析精度の向上に成功した。現時点で、EDSの全病型の遺伝子解析に対応可能な日本で唯一の施設となっている。 症例群Aに分類された2症例においてともにCOL5A2遺伝子変異を同定し、かつ顔貌および皮膚・骨格症状がきわめて類似していたため、特異な古典型EDSのサブタイプである可能性が示唆された。また、症候群A~Dの他に、本邦では論文報告のないテネイシン異常(TNXB変異)によるEDSが疑われる5症例を見出し、現在臨床的、生化学的検証を行っている。これらの本成果は、予定を上回るものといえる。 二次遺伝子スクリーニングとしての全エクソーム解析を、平成25年度に引き続き、症例群B、Dを有する症例に対して行っているが、現時点で病的変異は同定できていない。 以上、全体として当初の計画以上といえる。
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今後の研究の推進方策 |
臨床的探索として、研究代表者および分担者の籏持淳博士により、引き続き全国医療機関から既知のEDS病型に属さない新たな症例の収集(臨床情報、患者由来検体)を継続する。注目しているA~Dの4症例群においては、症例数を増やし、臨床情報を蓄積する。特に症候群Aにおいては、臨床症状、自然歴をまとめ、学術集会や論文発表を行う。A~Dに該当しない症候群として、テネイシン異常によるEDSが集積しているので、臨床的、分子遺伝学的、病理学的に検証し、世界での既報告症例と比較する。 分子遺伝学的探索として、研究代表者、分担者の涌井敬子博士により、引き続きIon PGMTMシーケンサを用いた一次スクリーニング(既知のEDS病型および類縁結合組織疾患の原因遺伝子を搭載したカスタムパネルおよびカバー不良部位に対するSangerシーケンス)により、関連遺伝子を調べる。 一次スクリーニング陰性例に対しては、引き続き、分担者の三宅紀子博士、松本直通博士により、Ion Proton TM、Hiseq2000TM、Genome analyzerⅡxTMなどの高性能次世代シーケンサを用いたエクソーム解析による網羅的遺伝子変異スクリーニングを行う。変異が同定されれば、Sanger法で検証する。 これら臨床的、分子遺伝学的探索は、国内の連携研究者(森崎裕子博士、渡邉淳博士)、海外の研究協力者(De Paepe博士、Malfait博士)と情報交換しながら行い、適宜アドバイスを得る。研究成果をまとめ、国内外関連学会および国際誌に報告する。 本研究を推進するのと並行して、上記研究計画において倫理的問題がないか、分担者の福嶋義光博士により検討される。
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究における主な消耗品として、デスクトップ型ion PGMTMシーケンサを用いた候補遺伝子スクリーニング関係、Hiseq2000TMなどの高性能次世代シーケンサを用いたエクソーム解析関係がある。入手および解析する症例数、使用する消耗品代を予測して研究計画を立てていたが、解析症例数が予想どおりのペースではなかったこと、および使用試薬の価格変動や新規試薬の採用などで消耗品代も予想どおりの購入状況から若干変わったことから、次年度使用額が生じることとなった。
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次年度使用額の使用計画 |
平成26年度同様、主な消耗品代として、デスクトップ型ion PGMTMシーケンサを用いた候補遺伝子スクリーニング関係、Hiseq2000TMなどの高性能次世代シーケンサを用いたエクソーム解析関係を予定している。解析症例数を予測しながら、最適量の消耗品を購入し、次年度使用額と平成27年度請求額を合わせて当初計画どおりの予算執行を行う。
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