研究課題
日本、フランス、ドイツ、オランダの4ヶ国におけるQT延長症候群679家系3782症例の変異遺伝子の伝達を検討した論文を投稿中である。QT延長症候群に母方の変異アレルが多く、特にKCNQ1の変異アレルでは顕著である。QT延長症候群のサブタイプのうちKCNQ1遺伝子変異が原因となるものはLQT1と呼ばれるが、特にKCNQ1は刷り込み現象(imprinting)を認める遺伝子であり、父方の遺伝子は発現していない臓器もあるが、QT延長症候群に関しては母方あるいは父方から生まれた症例の臨床像に差はなく、心臓にはKCNQ1は両アレルともに発現していると考えられる。よって、母方の変異遺伝子が父方の約2倍存在する理由として、刷り込み現象によって母方から変異を伝達された症例の臨床像が重症であることから生じるものではないと考えられた。また、子に遺伝子を伝達する際にアレルの伝達は同等ではない可能性を指摘されており、3世代間の遺伝子伝達に関しては、フランスの遺伝子研究機関であるCEPHにあるサンプルを使用し祖父母の遺伝子の伝達を検討したが、KCNQ1、KCNH2、SCN5Aのアレル伝達はメンデルの法則に従っていた。一方、QT延長症候群の3世代間遺伝子伝達はKCNQ1、KCNH2でCEPHデータと乖離を認め、母方の祖母の変異アレルが多く特にKCNQ1は父方の祖父の変異アレルの約3倍であった。また、dominant negativeあるいはmissenseタイプの変異を有する家系のほうがhaploinsufficiencyタイプの家系より母方の変異アレルが多かった。チャネルの機能異常の程度が変異遺伝子の伝達乖離に相関があるため、発現したイオンチャネルの生殖細胞への直接の関与が推定される。
3: やや遅れている
QT延長症候群の家族解析において母方からの変異遺伝子の伝達が多いことは明らかとなったが、基礎病態の解明がまだ出来ていない。
心筋カリウムチャネルが生殖細胞に発現し、受精時に何らかの影響を与えていることが明らかになってきている (Life Sci 2007; 80: 2195-2198., Hypertension 2011; 58: 497-504.,Mol Endocrinol 2013; 27: 940-952).特にKCNQ1遺伝子はさまざまなβサブユニットと関与して消化管、内耳などにも発現しており、チャネルの機能変化がもたらす心臓以外の臓器への影響を基礎的側面から検討する体制を整える。
すべて 2015 2014 その他
すべて 雑誌論文 (6件) (うち査読あり 6件) 学会発表 (14件) (うち招待講演 1件) 図書 (1件) 備考 (2件)
Heart Rhythm
巻: 11 ページ: 629-34
10.1016/j.hrthm.2013.12.011.
Europace
巻: 16 ページ: 1646-54
10.1093/europace/eut382.
J Cardiovasc Electrophysiol
巻: 25 ページ: 522-30
10.1111/jce.12361.
Clin Genet
巻: 87 ページ: 279-83
10.1111/cge.12357.
巻: 16 ページ: 1828-37
10.1093/europace/euu063.
Intern Med
巻: 2014 ページ: 1523-6
http://www.shiga-med.ac.jp/~hqmed1/
http://www.shiga-med.ac.jp/db/pub_top.php