研究課題
1. マウスKlf14遺伝子の発現解析これまでに、マウスKlf14遺伝子は胎仔期の複数の臓器と成体期の白色脂肪組織で高レベルで発現していることをRT-PCRにより明らかにしていた。今年度は、Klf14-ノックアウト(KO)マウス系統(KOアレルではKlf14 ORF配列がLacZに置換されている)を使ったベータガラクトシダーゼアッセイにより、Klf14は胎仔期においては主に中胚葉系由来組織で強く発現していること、成体期の白色脂肪組織においては、成熟した白色脂肪細胞で発現していることを確認した。2. KLF14の白色脂肪組織における生理機能解析Klf14-KO系統を用いて、Klf14遺伝子の代謝関連機能を個体レベルで検討した。Klf14-/-♂・Klf14+/+♂各8個体に8週間 (9-16週齢)、高脂肪食を与え、期間中あるいは高脂肪食負荷終了後に、各種表現型(食物摂取量、体重、身体組成、経口ブドウ糖負荷試験、インスリン耐性試験、自発運動量)を解析した。それらの項目については二群間で有意な差は認められなかった。両群の白色脂肪組織を対象とした発現アレイデータを取得・解析したところ、Klf14-KOマウス由来白色脂肪組織で発現が低下している遺伝子群に炎症・免疫関連遺伝子が高頻度に含まれることが見出された。KLF14はアディポカイン遺伝子群の発現制御を介して肥満に伴う炎症時のマクロファージ集積を調節している可能性が考えられる。3. Mest-DMRノックアウトマウス作出Klf14のインプリント発現はMest-DMRにおけるDNAメチル化により制御されていると予想されるが、直接的な証明が待たれる。また、そのようなlong-range制御を担う分子機構については一切不明である。そこで、Mest-DMR KOマウス作出実験を開始した。当初計画のES細胞でのジーンターゲティングからCrispr-Cas9システムによる受精卵ゲノム改変に方法を変更し、得られた58個体をスクリーニングし、Mest-DMR欠失系統を2系統、Mest-DMR逆位系統を1系統樹立することに成功した。
2: おおむね順調に進展している
KLF14の生理機能解明については順調に解析が進み、平成27年度中に論文投稿を目指す。Klf14の転写制御機構の解明において重要な解析対象となるMest-DMRマウス系統の樹立にも成功した。
Mest-Klf14染色体ドメインのクロマチン高次構造解析を重点的に推進することを試みる。これまでに別研究で確立した解析手技(ChIP-seq, HiC-seq, 4C-seqなど)を応用する。
遺伝子改変マウス作出方法を受精卵でのゲノム編集法に変更することで、消耗品費が節約できた。
クロマチン高次構造解析の手段として次世代シーケンシング法を予定しており、その試薬購入に充てる。
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すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 5件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (2件) (うち招待講演 1件)
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