研究実績の概要 |
新WHO分類(2012年)において、乳腺神経内分泌癌(B-NEC)の組織亜型は大きく改訂されたが、その明確な定義と意義について示した [Histopathology, 2015.診断病理,2016.乳癌の臨床,2015. Breast & Gastric (HER2病理部会), 2015]。 近年、我々は、発生学的に通常型の非浸潤性乳管癌が浸潤時ないし浸潤後にNE形質を獲得した、極めて稀な扁平上皮分化を伴う乳腺小細胞癌を報告したが、そのTTF-1発現の意義に関して追記した (Histopathology, 2013 & 2015)。B-NECにおいて、needle tract seedingによる再発機序を初めて報告し、その予防がbiopsy trackに対する放射線照射、その外科的切除、ないしは吸引式乳房組織生検装置の使用であることを示した [Virchows Arch, 2015. 27th European Congress of Pathology (ECP)/Virchows Arch, 2015. 日本内分泌病理学会 トラベルグラント賞 (2015年)]。 癌性リンパ管症を呈し、極めて侵攻性の臨床経過を示した乳腺glycogen-rich clear cell carcinomaを初めて報告した (Pathol Int, 2015.27th ECP/Virchows Arch, 2015.腫瘍病理鑑別診断アトラス‐乳癌‐第2版,文光堂)。稀な乳腺lymphoepithelioma-like carcinomaの細胞学的特徴を明確に示した (Cytopathology, in press.28th ECP/Virchows Arch, 2016)。さらに、泌尿器原発のCD56陽性B細胞リンパ腫を初めて報告した (J Clin Pathol, 2016.28th ECP/Virchows Arch, 2016)。 その他、B-NECと血性乳頭分泌症状の密接な関連性、B-NECと乳管内乳頭腫の発生学的関連性、高悪性度B-NECにおける前駆病変、基底膜物質の過剰産生を伴う乳腺myoepitheliosis、多形型小葉新生物の細胞病理学的特徴等について報告を行った (27th ECP/Virchows Arch, 2015)。 以上の新知見、ならびに平成25-26年度の研究成果に基づき、発展研究の計画・立案を行い、平成28-30年度 科学研究費助成事業 [基盤研究 (C)] (16K08654) を獲得した。
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