研究課題
本研究では胃癌組織における癌幹細胞の組織形態学的な特徴を明らかにすることを目的とする。特に基底膜接着幹細胞に類似した細胞に注目し、組織学的な特徴を明らかにする。平成27年度では、スフェロイドにおいて高発現しているKIF11とIQGAP3に注目し解析を進めた。KIF11はkinesinモーター蛋白質の1つで、モーター蛋白質として細胞分裂時において染色体の分配に関わっているが、胃癌におけるKIF11の発現解析は報告がなく、免疫染色で解析した。胃癌166例を材料にKIF11の発現を免疫染色で解析した結果、胃癌組織では多くの腫瘍細胞の核に染色された。合計で119例(72%)の症例で陽性例を認め、KIF11陽性例の多くは腸型形質の胃癌であった。次にMKN-74を材料にKIF11の発現をノックダウンし、スフェロイド形成能について検討した結果、スフェロイドの数、大きさ、いずれもが低下した。以上の結果から、KIF11は腸型形質の胃癌の発生に関わっていると考えられた。IQGAP3は膜貫通蛋白質でErkのリン酸化に関わっている。胃癌におけるIQGAP3の発現解析は報告がなく、胃癌165例を材料にIQGAP3の発現を免疫染色で解析した。その結果、IQGAP3は胃癌組織では腫瘍細胞の膜に強い発現を認め、34例(26%)の症例で陽性で、IQGAP3陽性例は有意に胃型形質の胃癌であり予後不良であった。次にMKN-74を材料にIQGAP3の発現をノックダウンし、スフェロイド形成能について検討した結果、スフェロイドの数、大きさ、いずれもが低下した。以上の結果から、IQGAP3は胃型形質の胃癌の発生に関わっていると考えられた。研究期間全体を通じ、KIFC1、KIF11、IQGAP3いずれも基底膜接着幹細胞に類似した細胞の特異的なマーカーではなく、組織学的な特徴を明らかにするには至らなかった。
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