研究課題
食道癌は予後不良な癌のひとつである。手術療法に加えて、進行癌には化学・放射線療法が適用されるが、予後の大幅な改善には至っていない。その原因として、有効な抗癌剤、特に分子標的薬の開発が進んでいないことが挙げられる。私は、本研究で、マリファナ様物質である内因性カンナビノイドの受容体分子(Cannabinoid receptor 1: CB1R)が食道癌症例で過剰発現しており、診断マーカーおよび治療標的分子としての価値が高いことを見出した。1.CB1Rの診断マーカーへの応用約60%の食道癌症例でCB1R陽性所見を認めた。CB1R発現は、リンパ節および遠隔臓器への浸潤と有意に相関しており、独立予後因子であった。また、CB1R陽性症例では、表層の癌組織(上皮内癌)も深部の癌(浸潤癌)も同程度にCB1Rを発現していたことから、表層部の組織の発現程度を調べることによってその症例のCB1Rの発現動態を把握することが可能であった。このことは、生検組織のCB1Rの免疫組織化学により、転移の有無や予後を予測できることを示唆した。2.CB1Rの治療への応用細胞増殖におけるCB1Rシグナルパスウェイの役割は、癌腫によって異なることが報告されている。CB1Rを発現しているヒト食道癌細胞株にCB1R阻害剤を添加すると、有意に細胞増殖が抑制されたことから、食道癌においてはCB1Rシグナルパスウェイの遮断は、分子標的治療として有望であることが示唆された。
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