研究実績の概要 |
子宮内膜腺癌の腫瘍発生はこれまでタイプ1(腫瘍の90%)とタイプ2(10%に分類されていきた。しかし子宮内膜腺癌の多くは類内膜腺癌で、タイプ1を構成する癌のほとんどは類内膜腺癌である。これまでの分類では類内膜腺癌の分子レベルの異常を特徴づけているとは言えない可能性があり新しい分子仮説が必要とされている。子宮内膜癌はホルモンの影響を受けており、エストロゲン過剰発現との関連が密接に関連していることが明らかになっているが、乳癌で用いられているエストロゲン(ER)、プロゲステロン (PgR)、HER2の発現に基づいた分類はこれまで子宮内膜癌には用いられてこなかった。ER陽性;PgR陽性;HER2陰性をA型、ER陽性;PgR陽性;HER2陽性をB型、ER陰性;PgR陰性;HER2陽性をC型、全て陰性をD型として、類内膜腺癌の臨床病理学的および分子異常について検討を行った。分子解析についてはmicrosatellite instability (MSI)、PTEN及びp53の発現解析、変異解析 (KRAS, BRAF, PIK3CA)、PCR-allelic imbalance (AI)解析(3p. 5q, 10q, 13q, 17p, 18q)、DNAメチル化解析(SFRP1, SFRP2, SFRP5, DKK-2, DKK-3, HOXA9, mir-34b/c, p16, MLH1, MINT1)を行い、それぞれのタイプ(A-D)に基づいて比較、検討を行った。タイプA、BではステージI期、II期が多く、タイプC、DではIII期、IV期が多かった。PTENの発現低下は全てのタイプにみられたが、タイプCではやや発現低下を示す例が少なかった。一方KRAS変異はタイプCで多い傾向がみられ、PIK3CA変異はタイプA、Bに多い傾向がみられた。AI解析ではタイプC、Dにおいて高AI状態が多くみられたが、MSIの頻度とメチルの程度4群間に差異はみられなかった。上記分類は子宮類内膜腺癌の病態を的確に反映しており、子宮類内膜腺癌の分子分類として有用と考えた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
ER陽性;PgR陽性;HER2陰性をA型、ER陽性;PgR陽性;HER2陽性をB型、ER陰性;PgR陰性;HER2陽性をC型、全て陰性をD型として、類内膜腺癌の臨床病理学的および分子異常について検討を行った。分子解析についてはmicrosatellite instability (MSI)、PTENの発現解析、変異解析 (KRAS, BRAF, PIK3CA)、PCR-allelic imbalance (AI)解析(3p. 5q, 10q, 13q, 17p, 18q)、DNAメチル化解析(SFRP1, SFRP2, SFRP5, DKK-2, DKK-3, HOXA9, mir-34b/c, p16, MLH1, MINT1)を行い、それぞれのタイプ(A-D)に基づいて比較、検討を行った。タイプA、BではステージI期、II期が多く、タイプC、DではIII期、IV期が多かった。PTENの発現低下は全てのタイプにみられたが、タイプCではやや発現低下を示す例が少なかった。P53過剰発現は全体に低頻度であった。一方KRAS変異はタイプCで多い傾向がみられ、PIK3CA変異はタイプA、Bに多い傾向がみられた。AI解析ではタイプC、Dにおいて高AI状態が多くみられたが、MSIの頻度とメチルの程度4群間に差異はみられなかった。上記分類は子宮類内膜腺癌の病態を的確に反映しており、子宮類内膜腺癌の分子分類として有用と考えた。
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