研究課題/領域番号 |
25460422
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
三上 修治 慶應義塾大学, 医学部, 講師 (20338180)
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研究分担者 |
小坂 威雄 慶應義塾大学, 医学部, 助教 (30445407)
水野 隆一 慶應義塾大学, 医学部, 講師 (60383824)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 腎細胞癌 / 分子標的治療 / 転移 / 癌幹細胞 / 上皮ー間葉転換 / 予後 |
研究実績の概要 |
淡明細胞型腎細胞癌では抗癌化学療法や放射線治療は無効であり、従来インターフェロンやインターロイキン等の免疫治療が行われてきたが奏効率は低い。VHL遺伝子の不活化によるHIF-VEGF分子経路が血管新生と癌細胞増殖に関与しており、転移性淡明細胞型腎細胞癌では同経路を阻害するスニチニブなどのtyrosine kinase inhibitor (TKI)による分子標的治療が第一選択となっている。しかし、分子標的治療後約1年で多くの症例において治療耐性が生じることが最大の問題である。本研究では、腎細胞癌由来細胞株786-O, ACHNを用いたin vitroの実験により腎細胞癌細胞株の上皮―間葉転換を誘導する因子がtumor necrosis factor-alpha(TNF)であることを解明した。また、TNFが腎細胞癌のin vitroにおける浸潤能を高めることおよびTNF投与により腎細胞癌細胞株のTNF発現が亢進することが判明した(autocrine)。さらにTNFは癌幹細胞マーカーCD44発現を誘導することが分かった。また、実際の腎細胞が組織では、TNF, CD44発現は原発巣の進展度、遠隔転移、組織学的異型度と相関していた。TNF, CD44高発現症例は低発現症例に比べ、早期に再発し、予後不良であった。また、CD44高発現例は低発現例に比べ分子標的治療が効きにくい傾向があった。TKI治療後残存癌組織を組織学的に検討した結果、微小血管密度が低下し、癌細胞の変性・壊死を認めるものの、残存している血管周囲に高度の異型性を示す癌細胞がみられた(上皮ー間葉転換の亢進が示唆される)。また、残存癌細胞の多くでは癌幹細胞マーカーCD44が高発現しており、これらの分子が腎細胞癌のTKI治療に対する抵抗性に関与していると考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究により腎細胞癌におけるEMT誘導因子がTNFであることが判明した。また、TNFによって誘導される癌幹細胞マーカーCD44発現が腎細胞癌のTKI治療に対する抵抗性獲得に関与していることが明らかとなった(Mikami S, et al., Int J Cancer, 2015)。
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今後の研究の推進方策 |
今後はCD44以外の癌幹細胞マーカー(ADAM17等)や血管内皮細胞の治療耐性に関与すると考えられる血管制御因子(VASH1)について検討を進め、多面的な検討により腎細胞癌の根治につながる知見を得るための研究を推進する。
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究資金の成果が平成26年度にInt J Cancerに採択されたが、論文掲載料、別刷り代金の請求は平成27年度となるため、上記金額に相当する金額を次年度使用額とした。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度使用額は上記論文の掲載料等に使用し、本年度の研究費の使用計画に大きな変更はない。
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