研究課題
腎細胞癌は根治術後でも高率に再発し、悪性度の高い腫瘍である。転移性腎細胞癌には効果的な抗癌化学療法がないため、近年は分子標的薬による治療が行われ一定の腫瘍縮小効果が得られている。しかし、治療開始後約1年で多くの症例で治療耐性が獲得されることが最大の問題である。ADAM17(a disintegrin and metalloproteinase17)はTNF-alpha (tumor necrosis factor-alpha)等の膜タンパク質をシェディングすることでがん細胞の増殖・浸潤・転移に関わると考えられている。本研究では、TNF-alphaが腎細胞がん細胞株(786-OおよびACHN)のE-cadherin発現抑制とmatrix metalloproteinase-9発現上昇によりがん細胞の浸潤能を高め、がん幹細胞マーカーであるCD44発現を誘導することを明らかにした。また、786-OのADAM17発現をsiRNAにより抑制するとがん細胞の遊走能と浸潤能が低下した。腎細胞がん切除検体では、ADAM17、TNF-alpha、CD44発現は原発巣の進展度、遠隔転移、組織学的異型度と相関しており、これらの分子を高発現している症例は早期に再発し予後不良であった。また、vascular endothelial growth factor receptorシグナルを阻害する分子標的薬スーテント治療後に残存している治療耐性がん細胞はADAM17、TNF-alpha、CD44を高発現していた。以上のデータより、ADAM17/TNF-alpha/CD44経路は、腎細胞がんの増殖・浸潤・転移に重要な役割を果たすのみならず、スーテント等の分子標的薬に対する治療耐性に関わっていることが示唆された。
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