研究課題
基盤研究(C)
高齢者胃癌の連続切除例420例464病変について,マイクロサテライト不安定性(microsatellite instability, MSI)と年齢との関連を検討した.その結果,MSIの比率は65‐74歳8.5%,75‐84歳18.4%,85‐96歳35.3%であり,加齢とともに有意に増加した.MSIを示す胃癌の特徴は,高齢,女性,幽門部発生との関連がみられた.組織型では,充実型低分化腺癌(43.0%),乳頭腺癌(32.5%)で有意に高率であった.MSIを示す早期癌では分化型成分が優位であったが,MSIを示す進行癌では差がなかった.これらの結果から高齢者胃癌のうち,充実型低分化腺癌に注目し検討した.低分化腺癌54例(充実型低分化腺癌31例,非充実型低分化腺癌6例,印環細胞癌17例)を対象として,粘液形質,ミスマッチ修復遺伝子発現,p53発現を免疫組織学的に,マイクロサテライト不安定性, KRAS変異,BRAF変異を分子病理学的に検討した.また,Epstein-Barrウイルス(EBV)の関連はEBERのin situ hybridization法で検討した.充実型低分化腺癌ではマイクロサテライト不安定性が52%,MLH1蛋白発現減弱が58%の症例で認められ,非充実型低分化腺癌・印環細胞癌と比較し,有意に高率であった(P < 0.05).EBVは充実型低分化腺癌症例の2例に陽性像を認めるのみであった.低分化腺癌におけるKRAS変異はcodon 12変異が2症例,codon 13変異が3症例で認められたが,組織型との関連は認められなかった.MSIを示す充実型低分化腺癌は高齢,女性,幽門部発生,分化型成分の併存,MLH1蛋白発現減弱と関連がみられた.以上の結果より,高齢者胃癌はMSIと関連する腫瘍の占める割合が増加することが示唆された.
2: おおむね順調に進展している
現在予定してた50例を超える症例数の解析が終了したが,あと30例を追加する予定である.ミスマッチ修復遺伝子のメチル化との関連については次年度の課題としたい.
30例の症例を追加した後,充実型低分化腺癌の特徴に関する論文を仕上げる予定である.ここで明らかになったマイクロサテライト不安定性を示す充実型低分化腺癌の分子病理学的特徴を平成26年度は中心に解析を進める.また,充実型低分化腺癌の次にMSI陽性率が高かった乳頭腺癌についても検討を加える.さらに,早期癌の外科切除例,内視鏡的切除例を用いて,MSI陽性胃癌の初期像を検討する.平成25年度に得られた成果を学会で発表し,同じ分野の研究者と意見交換し,その議論を踏まえて論文としてまとめる予定である.
平成25年度は病院・研究所の新築,移転に伴い,数か月間実験が滞る事態が生じた.新施設に移転して,研究環境が整い,研究を再開してからは順調に進行している.移転後の研究を推進する体制が整ったので,平成26年度は実験補助職員を雇用し,積極的に解析を進めていく予定である.
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すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 4件) 学会発表 (2件) (うち招待講演 1件) 備考 (1件)
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