研究課題
基盤研究(C)
本研究では、癌の特性と個人の体質の双方を組み合わせることにより、高精度で実用に耐える非小細胞肺がんの化学療法感受性予測システムの構築をめざすとともに、化学療法抵抗性やステムネスの克服につながりうる治療標的としてのマイクロRNA同定を目指す。本年度は、癌の特性に着目し、秋田大学医学部附属病院で切除され、術後補助化学療法を施行された病期IIおよびIII期の非小細胞肺がん95例の手術切除標本について免疫組織化学的検討およびマイクロRNA発現の検討を行った。免疫組織化学的検討として、DNA除去修復に関わるERCC1、化学療法後のDNA修復、アポトーシス誘導にかかわるp53につき検討したが、化学療法反応性との相関はいずれも確認できなかった一方、がん幹細胞マーカーとされるALDH1,CD133の免疫組織化学も試みたが、対象例の病理パラフィン切片での染色性が不良であり、評価困難であった。化学療法反応性とかかわると想定される8種類のマイクロRNAの発現を半定量的PCRで測定した。うち1つのマイクロRNAが化学療法反応性と相関していた。また、2種のマイクロRNAは症例の病理組織型により発現に差がみられた。化学療法反応性と相関するマイクロRNAが実際に癌細胞に発現しているのか、あるいは癌間質由来のものであるか確認するために、このマイクロRNAにつき病理切片でのIn situ hybridization法を施行中である。
2: おおむね順調に進展している
非小細胞肺がんの化学療法抵抗性の克服につながりうる治療標的としてのマイクロRNA同定に至ったため、おおむね順調に進展しているものとした。一方、免疫組織化学での化学療法感受性関連因子の同定には至っていないため、計画以上に進展しているとすることはできない。
免疫組織化学での化学療法感受性関連因子の同定のため、ERCC1,p53以外のDNA修復やアポトーシス関連因子の免疫組織化学的検討を行う。また、がん幹細胞マーカーについては病理パラフィン切片での評価が困難であったので、凍結切片での評価を行う。化学療法反応性に相関するマイクロRNAについては、さらに多数例での検証を行い、その実用性を確認する。以上より非小細胞肺がんの化学療法感受性予測システムの主たる構成因子である癌の特性を明らかにする。また、当初計画のとおり、本年度より個人の体質(DNA修復と薬物動態に関する遺伝子多型)に関しての検討を開始する。
すべて 2013
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