研究課題
本研究では癌の特性と個人の体質の双方を組み合わせることにより、高精度で実用に耐える非小細胞肺がんの化学療法感受性予測システムの構築をめざす。同時に化学療法抵抗性やステムネスの克服につながりうる治療標的としてのマイクロRNA同定を目指す。本年度は、個人の体質に着目した検討を主に行った。具体的には秋田大学医学部付属病院で手術切除された非小細胞肺癌のうち、術後化学療法の施行された病期II期およびIII期の200例の非腫瘍肺組織からDNAを抽出し、、DNA修復に関するERCC1の遺伝子多型や薬物動態に関連するGSTP1、MDR1、ABCG2 の遺伝子多型を検索した。しかしながら、これらの遺伝子多型と術後化学療法との反応性は明らかではなかった。並行して対象例のEGFR変異の有無を解析し、今後の研究を行うにあたっての基礎的資料とした。過年度の研究では、免疫組織化学的にALDH1,CD133といったマーカーを用いて非小細胞肺癌病理パラフィン切片での癌幹細胞性の評価を試みたが、染色性が不良であり、安定的に評価を行うことができなかった。そこで、今年度はEpCAM, CD166による癌幹細胞性の評価を試みた。これらのマーカーは評価可能な染色性を病理パラフィン切片で示した。さらに、過年度研究において見出した術後化学療法反応性と相関するマイクロRNAについては、In situ hybridizationでの検討により、癌間質ではなく、癌細胞そのものに発現していることが確認された。
2: おおむね順調に進展している
本研究の目的を達成するためには、非小細胞肺癌術後化学療法反応性と相関する(1)癌幹細胞マーカーの同定、(2)マイクロRNAの同定、(3)DNA修復あるいは薬物代謝に関連する遺伝子多型の同定、が必要である。うち、(2)に関してはすでに同定を終えた。(1)に関しては過年度研究では評価自体が困難であったが、今年度の研究で安定的に評価可能なマーカーを見出し、研究の進展があった。(3)に関しては現在までのところ、見出していない。
「現在までの達成度」の項で述べたとおり、非小細胞肺癌術後化学療法反応性と相関する(1)癌幹細胞マーカーの同定、(2)マイクロRNAの同定、(3)DNA修復あるいは薬物代謝に関連する遺伝子多型の同定、が必要である。(1)(2)に関しては現行の研究方針通りに研究を行い、研究期間内での成果の獲得を目指す。(3)に関しては多数の遺伝子多型の中から、適切な候補遺伝子多型を見出す必要がある。網羅的遺伝子多型解析を大規模に行っているグループの協力を得るなどの方策により、候補遺伝子多型の同定を目指す。
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