研究実績の概要 |
本研究では癌の特性と個人の体質の双方を組み合わせることにより、高精度で実用に耐える非小細胞肺癌の化学療法感受性予測システムを構築すると同時に、ステムネスや化学療法抵抗性の克服につながりうる治療標的としてのマイクロRNA同定を目指すべく、検討を行ってきた。最終年度にあたる本年は、抗癌剤の解毒代謝に関わると想定されるKeap1-Nrf2系に着目し、Keap1-Nrf2系の制御に関わるマイクロRNAを含めて検討を行った。公開データベース(TarBase ver 7.0)の検索により、Keap1-Nrf2系の各因子(Keap1, NRF2, NQO1, GSTP1, ABCC1)に抑制性に作用するマイクロRNAとしてmir-17-92クラスターに属するマイクロRNAが多く含まれることが判明した。そこで、肺腺癌手術例135例につき、Keap1-Nrf2系因子の免疫染色を行い、その発現を検討するとともに、qRT-PCRによりmir-17-92クラスターの発現測定を行った。その結果、Keap1高発現は135例中78例でみとめられ、Nrf2発現との逆相関が認められた。一方、術後化学療法施行例では、これらの発現状態と症例の化学療法反応性の相関は確認できなかった。また、Keap1とmir-17-92クラスターの属するmir-17, mir-92b、Nrf2とmir-17, mir-92aの相関を検討したが、逆相関関係を確認することはできなかった(unpaired t検定)。さらに、Keap1, Nrf2遺伝子についてマイクロRNAターゲット部位の遺伝子多型を同定し、その検索を現在各症例につき施行中である。
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