研究課題/領域番号 |
25460433
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研究機関 | 東京医科歯科大学 |
研究代表者 |
明石 巧 東京医科歯科大学, 医学部附属病院, 准教授 (60242202)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 皮質アクチン線維 / 肺癌 / 浸潤 / phosphatidylinositol4,5P |
研究実績の概要 |
アクチンが細胞膜下に形成する皮質アクチン線維はその収縮によってアメーバ型・集団型細胞運動を制御すると考えられている。そこで癌化に伴うアクチン線維の細胞内局在の変化と浸潤・転移との相関を病理組織学的に検討した。肺腺癌手術108例についてβ-Actin抗体を用いて免疫組織学的に検討を行った。β-Actin抗体8H10D10は細胞染色ではアクチン線維結合性のphalloidin、Lifeact-GFPとほぼ一致した局在を示し線維状アクチンを認識すると考えられた。正常気管支/肺胞上皮細胞ではアクチン線維は内腔側細胞膜下にほぼ限局するが、腺癌では内腔側に加えて間質側細胞膜下にも局在を認めた。間質側にアクチン線維の局在を示す症例は細気管支肺胞上皮型よりも腺房型/乳頭型/充実型に多く、stage、リンパ節転移、脈管侵襲と正の相関を示し、生存期間は有意に短いことを明らかにした。3次元培養細胞実験系を用い、活性型Cdc42とMT1-MMPで誘導される肺腺癌A549細胞の浸潤が皮質アクチン線維の形成を阻害するblebbistatinによって有意に抑制されること、皮質アクチン線維の局在がphosphatidylinositol4,5P結合性の蛍光プローブと相関し、アクチン線維の局在を規定する因子としてPIP45が推測された。以上の結果からPIP45が間質側の皮質アクチン線維の形成を介して癌の浸潤に関与している可能性が示唆された。 phosphatidylinositol3,4,5Pの下流に位置するNF-KBを指標として非腫瘍前立腺組織におけるPIP3-AKT-NFKB経路が活性化されていること、その活性化因子として細菌感染の可能性があることを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
皮質アクチン線維の局在と浸潤、転移との相関、PI4,5Pとの局在の相関を示すことができたのは大きな研究成果であったと考えている。一方、PI3,4,5P、PI3,4,Pと皮質アクチン線維、アクチン結合分子であるcortactinとの局在関係についてもFRET probeも作製して検索を行ったが、再現性のある結果がこれまでに得られていない。
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今後の研究の推進方策 |
引き続きPI3,4,5P、PI3,4,Pと皮質アクチン線維、アクチン結合分子との関係について検索を行う予定である。アクチン線維の収縮を制御する非筋型ミオシンの発現とそのリン酸化についても検索を行う予定である。
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