研究課題
基盤研究(C)
悪性リンパ腫において腫瘍幹細胞としての役割をもつ細胞を同定するためには,リンパ腫細胞からマーカーを利用してソートされた細胞をNOD/SCIDマウスに移植する必要があり,そのためには腫瘍幹細胞マーカーを検索しなければならない.これまでに悪性リンパ腫の一組織型であるホジキンリンパ腫の細胞株において,Hodgkin細胞類似の小型単核細胞群は同様の小型単核細胞を生み出すとともにReed-Sternberg細胞類似の大型多核細胞群を生み出すことを示し,小型単核細胞は腫瘍幹細胞のマーカーとして知られている活性酸素(ROS)除去能力が高く,アルデヒド脱水素酵素(ALDH)活性が高いことを示した.本年度は,これらの結果をもとにさらに小型単核細胞と大型多核細胞の差異についてそれぞれの細胞からmRNAを精製しcDNAを合成後,マイクロアレイにかけて,その発現に差のある遺伝子を検討した.その結果,小型単核細胞に比べ大型多核細胞で胎盤に発現するタンパクであるPSG1の発現が有意に高く,インスリンを加えることによって大型多核細胞の割合を増加させるとPSG1の発現が高くなることがわかり,腫瘍幹細胞の制御に関与している可能性が示唆された.また,ROS除去能を制御する因子として確認されたFoxO3aについて,さまざまな悪性リンパ腫症例における発現を検討した.腫瘍細胞にFoxO3aの発現がみられる組織型はホジキンリンパ腫,特に結節硬化型に多く,びまん性大細胞型B細胞リンパ腫をはじめとしたB細胞リンパ腫やT/NK細胞リンパ腫では少なかった.以上の結果は,FoxO3aがホジキンリンパ腫に特異的なROS除去酵素を制御する因子である可能性を示唆し,腫瘍幹細胞のマーカーとしての重要な役割を担っている可能性が示唆された.
2: おおむね順調に進展している
種々の腫瘍において腫瘍幹細胞を多く含むとされているROS除去能について検討し,悪性リンパ腫,特にホジキンリンパ腫において腫瘍幹細胞のマーカーとしての重要な役割を担っている可能性を示唆する結果が得られた.また,PSG1がホジキンリンパ腫における新たな腫瘍幹細胞マーカーの候補となりうる結果が得られた.
今後はホジキンリンパ腫を中心とした悪性リンパ腫において,DNAマイクロアレイの結果などを解析しながら,腫瘍幹細胞のマーカーとなりうる遺伝子の検討を行っていく.また,臨床検体を用いて病理組織学的にも検討を行う.
研究を進めていく上で必要に応じて研究費を執行したため,当初の見込み額と執行額は異なった.研究計画に変更はなく,前年度の研究費も含め当初予定通りに計画を進めていく.具体的には消耗品,情報収集あるいは成果発表のための国内旅費,複写費,研究成果発表費用(投稿料)に用いる予定である.
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