研究課題
基盤研究(C)
心血管イベントの多くが動脈硬化巣(プラーク)の破綻に伴う閉塞性血栓によって発症する。しかしながら、プラーク破綻が必ずしも血栓症の発症を引き起こすのではないことが認識されるようになってきた。動脈硬化性血栓症ではプラークの血栓形成能が特に重要と考えられるが、プラークの血栓能を検出する非侵襲的診断法は確立していない。本研究では、血管壁の糖代謝と血管の血栓能に注目し、18F-フルオロデオシキグルコース(FDG)と家兎動脈硬化性血栓モデルを用いて、FDG集積と動脈硬化巣の血栓形成能との関連を検討した。動脈に形成された血栓のサイズは陽電子放射断層撮影(PET)画像から算出した血管壁の放射活性と相関した。またFDGの集積は血管壁における組織因子(TF、血液凝固の開始因子)発現、TFの転写因子の一つであるnuclear factor (NF)-κB陽性核数と正相関を示した。この結果から動脈壁におけるFDG集積の程度はTFの発現と関連し病巣の血栓形成能を反映すると考えられ、FDG-PETによって動脈硬化巣の血栓性リスクを非侵襲的に評価できる可能性が示唆された。次に、動脈の代謝全体を明らかにするため家兎動脈硬化血管のメタボローム解析を行った。マクロファージに富む動脈硬化血管では、解糖系、ペントースリン酸回路、核酸代謝産物が増加しており、これは構成細胞の代謝の相違や低酸素環境の影響が示唆された。また、培養マクロファージのメタボローム解析で、炎症性刺激や低酸素刺激における代謝変動と線溶抑制因子であるプラスミノーゲンアクチベーターインヒビター1の変動が連動することが示唆された。これらの結果より、プラークの代謝解析やその検出により血栓症のリスク評価や、新たな治療指標の確立への展開が期待される。なお、臨床研究のための検体収集を継続している。
2: おおむね順調に進展している
研究成果として2本の研究論文を発表した。
臨床研究のための検体収集を継続する。基礎研究においては、代謝産物と血栓性因子の関連を検討する。
すべて 2014 2013
すべて 雑誌論文 (6件) (うち査読あり 6件、 オープンアクセス 1件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (5件)
Jpn J Radiol
巻: 32 ページ: 145-54
DOI 10.1007/s11604-014-0282-4
PLoS One
巻: 9 ページ: e86426
10.1371/journal.pone.0086426.
Thromb Haemost
巻: 110 ページ: 62-75
10.1160/TH13-01-0069
BMC Nephrol.
巻: 14 ページ: 125
Circ J
巻: 77 ページ: 2626-35
J Atheroscler Thromb
巻: 21 ページ: 99-107