研究課題
25年度に引き続き日光老化と癌の発生の関係を知るために染色体の不安定性を引き起こすテロメア短縮を表皮細胞で解析した。FISH法により表皮の構成細胞である基底細胞、傍基底細胞、棘細胞のテロメア長を測定した。25年度に日光非曝露部、日光曝露部、日光角化症の背景皮膚、日光角化症(Actinic keratosis(AK)、前癌病変)の4群のサンプルをパイロット研究として実施した結果をHuman Pathologyに投稿しアクセプトとなった。結果の概略として1.日光非曝露群、日光曝露群のおよびAK背景の、基底細胞のNTCR値は3種類の細胞種の中で最も高い値は示さなかった(研究グループの他の結果では基底細胞のNTCR値が最も高かった)。2.日光非曝露群における基底細胞のNTCR値は、日光曝露群と比較して有意に高かった。日光非曝露群の基底細胞、傍基底細胞、および基底上細胞のNTCR値は、AK背景の対応する細胞と比較して、いずれも有意に高い値を示した。3.日光曝露群の基底細胞、傍基底細胞および基底上細胞のNTCR値は、AK背景の対応する細胞と比較して、いずれも有意差は認められなかった。4. AK病変部位の基底細胞のNTCR値は、AK背景の基底細胞と比較して低値を示した。以上からテロメアの短縮を示すAKの浸潤のない表皮およびAK自体において、テロメアの短縮と染色体の不安定性を示す組織学的に正常な上皮から癌が発生することを確認した。このことから前癌状態または組織学的に正常な状態からの発癌において、テロメア機能不全と染色体の不安定性が極めて重要な役割を果たしていることが示唆される。引き続き東京都健康長寿医療センターの剖検例(同一個体)の日光被曝の有無(頚部と腹部)と、皮膚各細胞のテロメア長を比較解析する。
2: おおむね順調に進展している
パイロット研究により、日光被曝の有無による表皮基底細胞のテロメア長に差のあることがわかり、これらの結果を論文にすることができ一応の成果を今年度は残せた。老化関連のβ―Gal染色は良好な結果が得られていない。また、今後症例数を増加することが求められるがサンプルの剖検数による制限があるので、近年その数が減少してきているので、この点に関してはやや不安がある。
β―Gal染色については、サンプルの吟味を行い良好な結果が得られるよう更なる検討を加える。症例数の増加を心がける。過去に遡り利用可能なサンプルの洗い出しを行う。最終的に組織Q-FISH、免疫染色、β―Gal染色の結果を踏まえ論文を完成させたいと考える。
サンプルの収集が予想を下回り実験用試薬等の購入が予算より下回ったため。
物品費として研究用試薬の購入、英文校正費等に充当致します。
すべて 2014
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件、 謝辞記載あり 1件)
Human Pathlogy
巻: 14 ページ: 123-129
10.1016/j.humpath.2013.10.009. Epub 2013 Oct 19.