研究課題/領域番号 |
25460448
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研究機関 | 東京都立駒込病院(臨床研究室) |
研究代表者 |
元井 亨 東京都立駒込病院(臨床研究室), その他部局等, その他 (50291315)
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研究分担者 |
加藤 生真 東京都立駒込病院(臨床研究室), その他部局等, その他 (80644939)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 肉腫 / 腫瘍内多様性 / 遺伝子増幅 / CISH法 / MDM2 |
研究実績の概要 |
【目的】高分化型脂肪肉腫(WLPS)は良悪性中間腫瘍であり、約10%で高悪性度肉腫が新たに生じ腫瘍内に高分化、脱分化成分を有する脱分化型脂肪肉腫(DLPS)に進展する。MDM2遺伝子増幅及び遺伝子産物の過剰発現は両者に共通する特異的な異常であり、p53の制御を介した腫瘍の発生、進展への関与が示唆されている。前年度の解析からMDM2発現細胞の腫瘍内多様性は遺伝子増幅細胞の多様性の結果であり、WLPSからDLPSへの進展でMDM2遺伝子異常クローンが選択されると考えられた。本年度は、正常脂肪組織、良性脂肪腫(LP)及びDLPSの脱分化成分と組織像や腫瘍細胞の性質の区別が困難な高悪性度肉腫である未分化多形肉腫(UPS)を検討し、MDM2遺伝子異常や腫瘍進展への関与をさらに明らかにすることを目的とした。 【方法】正常脂肪組織5例、LP5例、UPS15例を用いて、MDM2遺伝子増幅をMDM2/CEN12の2色標識プローブを用いたCISH法、MDMとp53のmRNA発現状態を2色カラーISH法、MDM2タンパク発現を免疫染色により解析した。 【結果】正常脂肪組織、LPではMDM2遺伝子及び産物発現の異常はなかった。UPSでは 5/15(33%)でMDM2タンパク発現が腫瘍細胞の平均27%に検出され、そのMDM2mRNAレベルも陰性群より有意に高かったが、遺伝子増幅は2例の各4%、2%の腫瘍細胞に見られたのみであった。 【考察】MDM2遺伝子異常と産物過剰発現がWLPS、DLPSは極めて特異的な細胞遺伝学的異常であり、診断や将来のMDM2に対する分子標的治療に潜在的な有用性が示唆された。UPSのタンパク過剰発現は主としてエピジェネティックな機構による。しかしMDM2遺伝子増幅陽性UPSの存在は示唆的であり、近年報告されているようにUPS中にWLPS成分を欠くDLPSが含まれている可能性が高い。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初の計画では2014年度よりmicroRNA-34ファミリーを指標としてp53の機能的な活性化状態の解析の検索を開始する予定であったが、現在、技術的に検出手法の確立を行っている状態で、実施が遅延しているため。
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今後の研究の推進方策 |
原則的には予定に沿って研究を実施する。特にp53の下流の遺伝子について定量的RT-PCR法による検出が確立され次第、microRNA-34ファミリーの発現の検索を進める。近年、脂肪肉腫の脱分化現象に関する知見が進歩しており、高悪性度肉腫成分を結節状に生じる典型的な脱分化現象の他、本年度の研究で明らかにしたような高分化成分を欠き多形脂肪肉腫と区別できない腫瘍、低悪性度の脱分化腫瘍、脂肪分化を示す脱分化成分を有する腫瘍など、非定型的な脱分化現象が存在することが新たに判明している。こうした腫瘍を症例ファイルより抽出し、MDM2遺伝子異常の腫瘍内多様性について検索を進める予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初、年度内に本格的に実施を予定していた定量的RT-PCR等の分子生物学的な解析の実施を次年度に延期したため。
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次年度使用額の使用計画 |
技術的な手法の確立を行った後に次年度に実施する予定である。
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