研究課題
【目的】高分化型脂肪肉腫(W)は良悪性境界腫瘍であり、約10%に高悪性度の脱分化成分が生じ、脱分化、高分化2成分を有する脱分化型脂肪肉腫(D)に進展する。W、DはMDM2遺伝子増幅を基盤的異常として共有し、その結果MDM2遺伝子産物の過剰発現が惹起される。前年度までの研究で遺伝子増幅陽性細胞、mRNA・タンパク過剰発現細胞の頻度や分布には腫瘍内多様性があり、Dへの進展と脂肪分化の抑制と共にMDM2異常細胞のクローン選択が起こることが示唆された。一方、脂肪肉腫には形態、分化の腫瘍内多様性も存在し、骨、軟骨形成などへの異所性分化が見られる。今年度は異所性分化に着目し、遺伝子レベルと形態レベルの2つの多様性の関連について解析した。【方法】W62例、D24例の切除検体を組織学的に解析し、異所性分化のある症例を抽出した。MDM2発現状態を免疫組織化学的に検索し、さらにDual-color Chromogenic In Situ Hybridization(CISH)法により遺伝子増幅状態を解析した。【結果】Wの2/68例(3%)、Dの4/24例(17%)の脱分化成分に異所性分化が見られた。その内訳は骨分化(W1例、D1例)、軟骨分化(W1例)、骨・軟骨両者への分化(D2例)、横紋筋分化(D1例)であった。いずれの腫瘍のMDM2過剰発現の状態も異所性分化を欠く腫瘍と大きな差異はなかった。また、CISH法は軟骨分化を示すW1例のみで検出できたが軟骨分化細胞でも周囲の脂肪様細胞と同様のMDM2遺伝子増幅が見られた。【考察】異所性分化がDの脱分化成分で頻度が高い点は脱分化成分が形態的な腫瘍内多様性を生じやすい環境であることを示唆する。一方、MDM2遺伝子、タンパク発現異常の腫瘍内多様性と形態的な腫瘍内多様性の間には直接的な関係性はなく、形態的な多様性を生じさせる別の機構の存在が考えられた。
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