研究課題/領域番号 |
25460449
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
三橋 智子 北海道大学, 大学病院, 准教授 (60348208)
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研究分担者 |
畑中 豊 北海道大学, 大学病院, 特任講師 (30589924)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 浸潤性膵管癌 / 分子サブタイピング / 治療効果予測 |
研究概要 |
本研究は,通常型膵癌(浸潤性膵管癌)においてみられる特徴的な細胞形態および分子生物学的情報に基づき,ルーチン導入可能な免疫組織学的手法(IHC)を主体とする分子サブタイピング法の確立を試み,さらにこのサブタイプ間の遺伝子発現プロファイル解析から新規治療標的分子を探索することを目的としており,本年度は以下の3課題に取り組んだ. [1] 膵癌症例を用いた組織マイクロアレイ(TMA)標本の作製:浸潤性膵管癌と病理診断された195症例のうち,術前治療未施行の155例を用いて、TMA標本を作製した. [2] 膵癌TMA標本を用いた組織学的検討:膵癌TMA標本155例において,細胞・組織形態を観察し,核所見と細胞質所見に着目した分類した結果、膵癌の細胞亜型別の特徴的細胞像は,好酸性I型(12例),好酸性II型(125例),粘液型(14例),混合型(4例)の4型に亜分類され,好酸性細胞質 (+)かつ細胞質粘液(±)で,立方状~多稜形の細胞形態と高度な核異型を有する好酸性II型が全体の80%以上を占めることが明らかとなった.またこれら細胞亜型と膵癌関連MUCタンパク発現(MUC1,MUC2,MUC5AC,MUC6)の関係について検討したところ,MUC1と有意な相関が認められた(p=0.030). [3] 膵癌分子サブタイピングに寄与する遺伝子シグニチャー分子におけるIHC解析:Collissonらにより報告された膵癌分子サブタイプのうち,予後良好で,膵癌治療薬であるEGFR阻害薬elrotinibに高い感受性を示すとされているclassical(CL)タイプの構成シグニチャー分子群ついてIHC解析を行った.本年度は,構成シグニチャー分子群のうちMUC13について検討を行ったところ,高発現群で無再発生存および全生存期間の延長が認められ,予後良好となることが明らかとなった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究目的の達成のため,1年目にあたる平成25年度は,当初の予定を一部変更し,[1] 膵癌症例を用いた組織マイクロアレイ(TMA)標本の作製,[2] 膵癌TMA標本を用いた組織学的検討,[3] 膵癌分子サブタイピングに寄与する遺伝子シグニチャー分子におけるIHC解析を計画した. [1]については,2000年から2011年に北海道大学病院にて外科的切除され,浸潤性膵管癌と病理診断された195症例のうち,術前治療未施行かつホルマリン固定パラフィン包埋検体が利用可能であった症例数は155例と症例数が多かった点は評価できるといえる. [2]については,膵癌の細胞亜型分類法を確立し,さらにこれを用いて細胞亜型分類が予後不良因子として知られているMUC1発現と相関したことから,本分類の臨床病理学的意義を明らかにでき評価できるといえる. [3]については,CLタイプの構成シグニチャー分子群のうち,詳細な解析が完了したのはMUC13の1分子のみであったが,本アプローチにより,IHCサブタイピングが可能となる可能性が示唆され評価できるといえる. 今年度の研究の進捗については,一部着手内容を変更したものの概ね当初の実験計画通り進行したといえ,区分を(2)とした.
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今後の研究の推進方策 |
2年目にあたる平成26年度においてが,上記2課題について継続実施を行い,以下の2点について検討する. ①昨年度に続き,CLタイプの構成シグニチャー分子群ついてIHC解析を行うと共に,膵癌の標準治療薬であるgemcitabineへは高い感受性を示すquasimesenchymal(QM)タイプのの構成シグニチャー分子群ついてもIHC解析を行い,IHCサブタイピング法の確立を行う. ②IHCサブタイピング法に基づき, CLタイプおよびQMタイプにサブタイピングされ,かつgemcitabine既治療症例の腫瘍部位から,レーザー・キャプチャー・マイクロダイセクション(LCM)法によりRNAを抽出し遺伝子発現解析を行い,IHCサブタイピング法のバリデーションを実施する.またこの解析から新たなgemcitabineの効果予測因子の探索を実施する.
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次年度の研究費の使用計画 |
上記[3]については,CLタイプの構成シグニチャー分子群のうち,詳細なIHC解析はMUC13のみに留まり,その他の分子のIHC解析を次年度に行うこととしたため,次年度使用額が生じた. 本年度同様,次年度も主に物品費に充てる予定であり,費目別には以下のように計画している.【物品費】遺伝子発現解析関連試薬やその他の消耗品として免疫組織化学研究用試薬,細胞培養用試薬,ウエスタンブロッティング解析など生化学研究に使用する試薬を購入する予定である.一方,設備備品費は,研究代表者が所属する部門に主要な研究設備が整っており,新たな設備備品の購入は考えていない.【旅費】情報収集や成果発表のため国内外の学会へ参加予定である.【人件費・謝金】該当なし.【その他】本研究で得られた成果を,学会誌等へ投稿することを予定している. 研究推進にあたっては,計画に基づき実験を進めていき,研究費を有効活用したい.
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