研究課題
現在まで、30例のIgA腎症と20例の非IgA腎症の扁桃組織を用いて以下のことを明らかにした。免疫染色の結果、IgA腎症の扁桃組織ではIgA(特にIgA1)の過剰産生を生じており、非IgA腎症に比べてthymic stromal lymphopoietin (TSLP)、TRLP receptor (TSLPR)、activation-induced cytidine deaminase (AID)、IgA-inducing cytokines [transforming growth factor-β1 (TGF-β1)、B cell-activating factor of the TNF family (BAFF)およびa proliferation-inducing ligand (APRIL)]の発現増強があり、IgA発現とTSLP発現の間に正の相関が確認された。IgA腎症では、扁桃胚中心から分離した濾胞樹状細胞関連クラスターでもIgA-inducing cytokinesの高発現が確認された。免疫二重染色、in situ hybridization (ISH)および免疫電顕で濾胞樹状細胞でのTSLPとTRLPRの蛋白およびmRNAの発現が確認された。IgA腎症の扁桃組織から分離した胚中心でIgA産生関連因子をRT-PCR法で検討した結果、IgA産生に必須であるAIDとIα-CμのmRNAの発現が確認された。さらに、非IgA腎症に比べて、IgA腎症ではTSLP、TRLPR、AID、TGF-β1 mRNAの発現量が増加していた。蛋白に加えてmRNAレベルでも、IgA産生に関わる因子の過剰発現が確認された。扁桃胚中心から分離した濾胞樹状細胞関連クラスターをTSLPで刺激すると、IgA産生が増強され、抗TSLP抗体で減少した。
2: おおむね順調に進展している
平成25および26年度の計画では、①IgA腎症の扁桃胚中心におけるTSLPとTSPLRの蛋白およびmRNAの発現、②扁桃胚中心内濾胞樹状細胞によるIgAの捕捉、③胚中心B細胞におけるAIDおよびswitch circle mRNA (Iα-Cμ)の発現、④扁桃胚中心内におけるサイトカインなどの発現、⑤リンパ濾胞内から分離した濾胞樹状細胞、胚中心内樹状細胞とB細胞におけるサイトカイン産生能について検討する予定であったが、これらについては既に検討済みである。
T細胞非依存性の免疫グロブリン産生において形質細胞様樹状細胞 (plasmacytoid dendritic cell; pDC)が主役を演じることが示唆されている。非IgA腎症患者とステロイド未治療例のIgA腎症患者から摘出された扁桃組織を用い、胚中心における形質細胞様樹状細胞の有無と機能について免疫染色とISH法で検討する。具体的には、①胚中心におけるpDCの有無:pDCのマーカーであるCD123とBDCA4を用いて免疫染色を行い、胚中心におけるpDCの出現頻度を非IgA腎症患者とIgA腎症患者で比較する。②機能的なpDCの有無:胚中心におけるtype I interferon産生pDCの有無を免疫染色とISH法で検討し、非IgA腎症患者とIgA腎症患者で比較する。③pDCにおけるIgA産生細胞の発生に関与する因子の発現:IgA産生細胞の発生に関与する因子(TGF-β1、IL-10、BAFF、APRILなど)について免疫組織学的に検討する。
平成26年度は25年度までの物品費等でまかなえたため、支出がなかったが、研究はとどこおりなく行えた。
平成27年度の計画に合わせて使用する予定である。
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