研究概要 |
附属病院外科で切除された胃癌239例のフォルマリン固定パラフィン包埋切片よりDNAを抽出し、2種類のmultiplex ligation-dependent probe amplification (MLPA) キット(P175-A2 Tumour-Gain kit、P231-A2)を用いて、MDM4, MYCN, ALK, PDGFRA, KIT, KDR, DHFR, EGFR, MET, SMO, BRAF, FGFR1, MYC, ABL1, RET, CCND1, CCND2, CDK4, MDM2, AURKB, ERBB2, TOP2A, AURKA, AR、FGFR2 and FGF10の遺伝子コピー数を検索した。またERBB2とEGFRについては, 全症例を対象に免疫染色にて蛋白の過剰発現を検索し陽性症例では連続切片をもちいたfluorescence in situ hybridization (FISH)を用いて遺伝子増幅を検索し、MLPAの結果と比較した。 MLPA では、ERBB2の’amplification’は13例、’gain’は15例、他の211例は’normal’であった。免疫染色陽性例について行ったFISHでは、13例の’amplification’全例に遺伝子増幅が見られ、其の増幅形態は12例がhomogeneously stainng resion (HSR) 型、1例がdouble minute (DM) 型であった。また、’gain’の15例のうち1例を除いて全例にFISHで増幅がみられた。MLPAで’normal’とされた211例中7例にFISHで増幅がみられたが、いずれも、陽性細胞の割合は10%以下であった。 以上の結果から、胃癌における優勢な遺伝子増幅はMLPAでスクリーング可能であるという見地から、EGFR, FGFR2, MET, MYC, CCND1, MDM2のMLPA値が1.3以上(’amplification’& ’gain’)であった症例についてFISHを行った。結果、EGFR, FGFR2, MET, MYC, CCND1, MDM2の遺伝子増幅がそれぞれ4, 10, 2, 10, 5例に認められた。さらに、受容体チロシンキナーゼを標的とする分子標的療法を視野にいれ進行胃癌に限って検討すると、ERBB2, EGFR, FGFR2, METの遺伝子増幅は42例にみられERBB2とFGFR2の同時増幅の見られた3例を除くと重複増幅はみられなかった。
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