研究実績の概要 |
当院外科で2011年から2013年にかけて手術された胃癌262例のうち進行癌93 例の代表的なフォルマリン固定パラフィン包埋切片から、DNAを抽出し、multiplex ligation-dependent probe amplification (MLPA)を用いて、癌遺伝子の増幅を調べた。検索した遺伝子はERBB2, EGFR, MET, MYC, CCND1, MDM2,TOP2A ほか17遺伝子 (SALSA MLPA KIT P175-A2 Tumor-Gain kit)及びFGFR2, FGF10 (SALSA MLPA probemix P231-A2 kit) である。さらに、32腫瘍において「増幅」あるいは「増加」と判定された16遺伝子の増幅をfluorescence in situ hybridization(FISH)で確認し、遺伝子の過剰発現を免疫染色で検討した。その結果、増幅のみられた遺伝子は以下の如くであった:ERBB2 (13例, 14%), FGFR2 (7例, 8%), MYC (7例, 8%), TOP2A (7例, 8%), MET (4例, 4%), MDM2 (4例, 4%), CCND1 (3例, 3%), FGF10 (2例, 3%), and EGFR (1例, 1%). 受容体型チロシンキナーゼをコードする遺伝子はERBB2とFGFR1の同時増幅が見られた1例をのぞけば、1個の腫瘍に1種類の遺伝子増幅に限られた。この事実は個別化した分子標的治療を考えるうえで有意義であり、Modern Pathologyに発表した。 当院外科で2011年から2013年にかけて手術された乳癌343例の代表的なフォルマリン固定パラフィン包埋切片から、DNAを抽出し、MLPA kits(MLPA P078-B1及び-C1)を用いて、癌遺伝子の増幅を調べた。 8p11-12, 11q13, 17q12に増幅遺伝子がみられ、FISHを用いて、増幅遺伝子の詳細な検討を行っている。 57例の肺転移大腸癌からDNAを抽出しており, MLPAで増幅遺伝子の検索を行う準備が完了した。
|
今後の研究の推進方策 |
胃癌:我々のアドバイスを受けて、MRC-Holland社 (Amsterdam, The Netherlands)より胃癌で増幅頻度の高い16 遺伝子を検索するMLPAキット(SALSA MLPA probemix P458-B1 Gastric cancer)が商品化された。これは、従来、我々が使ってきたSALSA MLPA KIT P175-A2 Tumor-Gain kitのうち胃癌で増幅頻度の低い遺伝子のプローブを削除して、あらたにPIK3CA, GATA4, PTPA3, FGFR2, KRAS, KLF5, GATA6に対するプローブを加えたものである。これによって、今まで2つのMLPA キットを用いて遺伝子増幅を検索してきたが、SALSA MLPA probemix P231-A2 kitが不要となるとともに、あらたに注目されてきた遺伝子の検索が可能となった。今後、このキットを用いて、前回検索にもちいた材料にさらに新たな症例を加えて検索を行う。
|