研究課題/領域番号 |
25460454
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研究機関 | 滋賀医科大学 |
研究代表者 |
杉原 洋行 滋賀医科大学, 医学部, 教授 (30171169)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 胃癌 / アレイCGH解析 / 階層的クラスタリング / 定量的PCR |
研究実績の概要 |
今年度は腺腫を含む小型の胃粘膜内腫瘍の内視鏡切除材料について、アレイCGH解析を行い、前年度準備したprimerセットを使って、定量的PCRでTP53、MYCを含む5遺伝子のコピー数をランダムに選んだ8サンプルについて判定し、アレイCGHの結果と比較した。その結果、40比較の半数強の検体でアレイCGHのコピー数と定量的PCRによるコピー数との不一致が見られ、定量的PCRで1コピーレベルを定量することは困難であることが分かった。そこで方針を転換して、①アレイCGHのデータが、染色体レベルで従来の結果と差がないことを確認した。②ゲノム全体のコピー数profileのunsupervised階層的クラスター解析を行う際、使う遺伝子サイズとそれに対応する遺伝子数を変化させ、再現性の良いクラスタリング結果を得た。そして、③同一腫瘍の異なる部分の類似性は、他の腫瘍との類似性よりも高い(その結果、クラスタ内で隣接する)ことを、内部標準として確認した。その上で、フェノタイプによる系譜解析とゲノムコピー数による系譜解析とを比較した。前者では腸型が腫瘍サイズ依存性に増加する一方で、癌進展に伴って発現頻度が低下したため、予後診断が困難であったが、ゲノムコピー数のプロファイルは、変化の大きなもの(unstable)と小さなもの(unstable/intermediate)の2つに大別され、腺腫の約20%が、コピー数増減のパタンが質的に進行癌のパタン(unstable)に似ており、また進行癌と同じ程度に高い頻度で変化が見られたため、これらは進行癌に進展しうると考えられた。 一方、クラスタ間で有意差のある遺伝子をt検定(Bonferroni補正後)でピックアップしたところ、腺腫を含む低異型度上皮内腫瘍の進展に関連する遺伝子として、RXRBやRAS関連遺伝子など51遺伝子を抽出できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
前年度準備したprimerセットを用いて、定量的PCRを行い、アレイCGHの結果と対比することができた。その結果、アレイCGHのvalidationは、定量的PCRでは困難であることが分かり、それに代わり、独自の再現性の確認によるvalidationの方法を確立し、また、同一材料でアレイCGH解析とphenotype解析を対比し、後者を進展リスク評価に使うことの限界を明らかにし、論文として発表することができた。アレイCGHデータの階層的クラスタ解析は、予定していた分化型、未分化型胃癌の早期癌から進行癌への進展リスク評価以外に、腺腫を含む胃の非浸潤性腫瘍の浸潤性腫瘍への進展リスク評価へも応用を広げることができた。
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今後の研究の推進方策 |
・腺腫成分と癌成分を含む腫瘍を中心に、validation setの症例を収集し、そのアレイCGH解析により、腺腫の癌への進展を確定し、前年度の続報の論文としたい。 ・リンパ節転移例と非転移例との比較、5年以上無再発のSM癌のESD症例とSM癌のESD後のリンパ節転移再発例の比較についてのアレイCGHデータをまとめて、論文にする。 ・進展リスク評価の実用化に向けて、定量的PCRから(前年度絞り込んだ遺伝子を用いた)カスタムアレイCGHへ方針を転換する。 ・retrospective studyからprospective studyへの展開:ESDでSM浸潤の確認できた癌でのアレイCGHの結果によって、その後の切除材料でリンパ節転移の有無をどの程度予知できるかを検討する。
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