研究実績の概要 |
平成27年度(最終年度)は、以下の研究成果を得ることができた。 1. 前年度に投稿中であった英文論文がAm J Cancer Res誌(インパクトファクター4.165)に掲載された(Vol.5, pp.2285-2293, 2015)。 2. AFP産生胃癌は肝転移を高頻度にきたし、標準化学療法に抵抗性を示す高悪性度腫瘍であるため、独自の化学療法レジメンが望まれる。手術切除された進行胃癌150例(AFP産生胃癌20例、通常型胃癌130例)を対象に、hENT1(2種類の抗体:F-12,SP120), OAT2, OCT2, OCT6およびOATP1B3について、AFP産生胃癌と通常型胃癌における発現レベルの違いを解析した。AFP産生胃癌におけるhENT1、OAT2高発現症例は通常型胃癌よりも有意に多かった(hENT1[F-12], P=0.007; hENT1[SP120], P=0.004; OAT2, P=6.54E-8)。一方、胃癌組織におけるhENT1、OAT2およびOCT6の発現は、非癌組織よりも高い傾向があった。以上から、AFP産生胃癌に対しては、ゲムシタビン(hENT1の取込基質)とフルオロピリミジン(OAT2の取込基質)の併用化学療法が効果を示す可能性がある。また、hENT1、OAT2およびOCT6の発現増強は胃癌の進展と関連しているかもしれない。これらの成果を英文論文として投稿中である。 3. AFPとhENT1ないしOAT2との二重免疫染色を施行し、これらの同時発現性について解析した。検討した9例中5例におけるAFP陽性胃癌細胞は、少なくともhENT1とOAT2のどちらかを高頻度に同時発現していることが証明された。この成果は第105回日本病理学会総会にて発表予定である。
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