研究実績の概要 |
膀胱癌のBCG治療の作用機序の解明および診断法の改良を目的に臨床検体と実験の2つの研究を実施した. (1)臨床検体において:目的:膀胱癌治療前後の自然尿細胞診において,核クロマチン分布解析が初診時の再発予測や膀注療法効果判定に有用であるかを検討した.対象と方法:病理組織学的に尿路上皮癌と診断された16症例93標本を用いて異型尿路上皮細胞のRD値や核内グレイ値を測定した.また,膀注療法による経時的変化も観察した.結果:再発症例では非再発症例に比べて初診時のRD値,核内グレイ値の相関係数(GY-CC),Pap.染色の核内グレイ値が有意に高値を示した.さらに,膀注療法の過程で非再発症例ではGY-CCが低下し,再発症例では上昇する傾向が見られた.結論:核クロマチン分布解析が初診時の再発予測や膀注療法効果判定に有用であることを確認した. (2)培養細胞を用いた実験:対象と方法:4日間通常培養したT-24に臨床と同様にBCG曝露を6回繰り返し,p21,p27,total pRB,pRB-S780,pRB-T821の発現率を調べた.結果:①Total pRB核内陰性細胞では,BCG群コントロール群ともにp21の発現はほとんど見られなかったが,Total pRB核内陽性細胞ではBCG群でp21陽性率が有意に高い結果となった.②Total pRB,pRB-S780については,各曝露回数において有意差はみられなかった.しかし,pRB-T821ではBCG曝露2回目以降で陽性率が有意に低い結果となった. ③核クロマチン分布(RD値)に関しては,BCG2h曝露細胞は,曝露回数が増えるにつれてRD値が上昇する傾向がみられた.RD>0の細胞は核クロマチン分布が中心より辺縁にある事を示しているので,BCG曝露によって核クロマチン分布が辺縁に位置する細胞が増加していくことが示唆された.
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