研究課題/領域番号 |
25460463
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 岩手医科大学 |
研究代表者 |
石田 和之 岩手医科大学, 医学部, 准教授 (40444004)
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研究分担者 |
菅井 有 岩手医科大学, 医学部, 教授 (20187628)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 胃粘膜下層浸潤癌 / 粘膜筋板の形状 / 粘膜下層浸潤距離 |
研究概要 |
胃粘膜下層 (SM) 浸潤癌について,胃癌の内視鏡的切除の適応を考える上で最も重要な組織学的判定方法における問題点を抽出した.第14版胃癌取扱い規約では,SM浸潤癌の診断の際に粘膜筋板下縁からの実測値の測定が必要となるが,粘膜筋板が不明瞭の定義が明確ではなく,かつ不明瞭な場合の仮想線の引き方に関する基準がないことが問題となっている. 平成25年度は,外科的切除された胃SM浸潤癌68例について検討し,免疫組織化学のdesmin染色を用いることにより粘膜筋板の形状が構造保持型,不連続・構造不明瞭型,完全断裂型の3つに分類できることを明らかにした.さらに,粘膜筋板の形状別に臨床病理学的検討を行ったところ,構造保持型では肉眼型に陥凹型が多く腫瘍径が大きい傾向がみられ,完全断裂型の肉眼型には混合型が多い傾向がみられた.SM浸潤距離は不連続・構造不明瞭型と完全断裂型で有意に大きく,SM浸潤部主組織型は完全断裂型において高分化型管状腺癌が少なく,組織混在率が高い傾向があった.粘液形質は不連続・構造不明瞭型と比較し完全断裂型で腸型の粘液形質を有する傾向が認められ,有意に胃型が少なかった.また,脈管侵襲は完全断裂型に有意に多く,リンパ節転移も他の2型と比較し多い傾向を認めた. 胃癌内視鏡治療後の追加外科手術の適応は,病理組織学的に組織型,脈管侵襲の有無,断端を評価するとともに粘膜下層への浸潤距離も重要な評価項目となる.粘膜筋板の形状によっていくつかの臨床病理学的な特徴を認めることが本研究で明らかとなったことから,浸潤距離の計測に粘膜筋板の形状を加味する必要性が示され,客観的でより正確なSM浸潤距離の評価につながるものと考えられた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
胃SM浸潤癌の病理組織学的評価における問題点として粘膜筋板の形状が抽出され,さらに3型に分類した粘膜筋板の形状によって臨床病理学的特徴が明らかとなった.これはほぼ当初の計画に沿って進展していると考えられる.また,当初の予定よりも早く研究成果を学会発表することができ,研究の進捗が順調であることを示しているものと思われる.
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今後の研究の推進方策 |
平成26年度は,平成25年度の結果をもとに,対象症例数を約100例程度まで広げるとともに病理組織学的な検討項目を増やし,粘膜筋板の形状ごとの臨床病理学的特徴,浸潤距離との関連を評価する.さらに,リンパ節転移陽性群 (追加切除が必要な群) と陰性群 (追加切除が不必要な群) との間で臨床病理学的な相違を導き,粘膜筋板の形状を加味した胃SM浸潤癌の評価方法を確立することを目標とする.また,本研究で作製した病理組織標本は全てスライドガラスデジタル化装置によりバーチャルスライド化し,ここで特に客観性,透明性を発揮すると思われる形態計測,免疫組織化学の判定についてデータを収集し,光学顕微鏡下における評価とバーチャルスライドを使用した評価との整合性を確認する.上記の研究成果は国内の関連学会で発表するとともに,論文投稿を行う予定である.
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