研究課題/領域番号 |
25460465
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研究機関 | 金沢医科大学 |
研究代表者 |
黒瀬 望 金沢医科大学, 医学部, 助教 (10319048)
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研究分担者 |
湊 宏 金沢医科大学, 医学部, 教授 (10293367)
正木 康史 金沢医科大学, 医学部, 教授 (40238895)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | IgG4関連疾患 / 線維化 |
研究実績の概要 |
IgG4関連疾患(IgG4RD)では、臓器によって線維化の程度に違いがみられるが、病巣辺縁部では血管周囲や導管周囲に同心円状の線維化がみられる。本研究ではIgG4RDにおける線維化の機序と、臓器による線維化の程度の違いを明らかにする。 最初に正常膵、顎下腺、リンパ節組織と、IgG4RDの膵、顎下腺、リンパ節組織を対象とし、pericyteマーカーとされているPlate derived factor alpha(PDGFRα)と筋上皮マーカー、筋線維芽細胞マーカーであるα smooth muscle actin(αSMA)を用いて、染色性の違いを検討した。その結果、IgG4RDでは線維化が進むにつれ、PDGFRα陽性、αSMA陽性細胞の増加が、腺房組織間で目立っており、pericyte、筋線維芽細胞がIgG4RDの線維化に深く関わっていると考えられた。次に、膵のIgG4RDと正常膵組織、慢性膵炎組織における、腺房構成細胞数(100か所)と腺房細胞数(高倍率10視野)、個々の腺房細胞の最大径(50か所)を計測した。腺房構成細胞数は、正常膵組織(平均10.33個)、慢性膵炎組織(平均8.06個)に対し、IgG4RD(平均4.34個)では有意差をもって減少していた(P< 0.0001)。腺房細胞数は、正常膵組織(平均630.3個)、慢性膵炎組織(平均342.7個)に対し、IgG4RD(平均83.8個)では有意差をもって減少していた(P< 0.0001)。個々の腺房細胞の最大径は、正常膵組織(平均25.7μm)、慢性膵炎組織(平均24.4μm)に対し、IgG4RD(平均18.3μm)では有意差をもって減少していた(P< 0.0001)。 IgG4RDでは正常膵組織や慢性膵炎組織と比し、腺房細胞数の減少が目立っていた。慢性膵炎組織では、腺房を構成する個々の細胞の萎縮は目立たなかったが、IgG4RDでは、腺房細胞間にpericyte、筋線維芽細胞が増生した結果、腺房を構成する細胞が離解して、個々の細胞の萎縮が目立っていると思われた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
IgG4RDでは腺房組織間にPDGFRα陽性、αSMA陽性のpericyte、筋線維芽細胞が増生した結果、腺房細胞の萎縮パターンが慢性膵炎と比べ異なっていると考えられた。IgG4RDの診断や病因を推察する上で、有用な所見と考えられたが、IgG4RDにおける線維化の発生機序の解明には至っておらず、また、免疫組織化学的な検討、分子生物学的な検討を追加しなければならない。
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今後の研究の推進方策 |
・膵腺房細胞だけでなく、唾液腺の腺房細胞、導管上皮細胞の萎縮に関しても検討を加える。 ・高倍率視野に占める線維化の割合について検討を加える。 ・IgG4RDとの組織学的鑑別が問題となる非IgG4RDや膵、唾液腺、リンパ節以外の臓器に発生したIgG4RDを用いて、筋上皮細胞、pericyte、筋線維芽細胞の局在を免疫組織化学的に検討する。また、他のpericyteマーカー(PDGFRβ、CD248)についても検討を加える。 ・IgG4RDにおけるTransforming growth factor(TGFβ1)を介した筋線維芽細胞分化の有無を免疫組織化学的に検討し、TGFβ/Smadシグナル伝達経路を介した線維形成がIgG4RDで引き起こされているか否かを明らかにする。 ・正常膵、顎下腺、リンパ節組織とIgG4RDの膵、顎下腺、リンパ節組織を用いて、レーザーマイクロダイセクションを行い、それぞれからRNAを抽出して、Real-time PCRを行い、PDGFαやαSMA発現の有無とmRNAの量的解析を行う。
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