研究課題/領域番号 |
25460466
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研究機関 | 兵庫医科大学 |
研究代表者 |
菊池 正二郎 兵庫医科大学, 医学部, 准教授 (70381960)
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研究分担者 |
笹子 三津留 兵庫医科大学, 医学部, 教授 (40143490)
落合 淳志 国立研究開発法人国立がん研究センター, 研究所, 副所長 (60183034) [辞退]
前山 義博 兵庫医科大学, 医学部, 非常勤講師 (80614031)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | がん間質反応 / 線維芽細胞 / 低酸素 / G0期 / 浸潤 / 転移 / 胃がん |
研究実績の概要 |
腫瘍の浸潤転移における微小環境因子の重要性が明らかになりつつあるが、それぞれの因子の具体的な役割は未だ解明されていない。本研究では、胃がん手術時に採取した患者検体を用いた「胃がん微小環境因子(特にがん関連線維芽細胞)」の解析から、がん間質細胞を含む細胞生物学的特性に基づく新しい進行胃がんの治療戦略を確立することを目的とする。以下に研究実績の概要を述べる。 1.平成26年度までに進行胃がんの浸潤最深部におけるがん細胞とがん関連線維芽細胞の複合体(IC factor: Intermingle of Cancer and Cancer Associated Fibroblasts)が胃がん細胞の浸潤・転移に強く相関していることを見出した。 2.平成27年度においては、線維芽細胞由来の液性因子が胃がん細胞に対して細胞周期・運動能・上皮間葉転換(EMT)に関する遺伝子発現変化をもたらすことを明らかにした。 3.細胞周期について:fucci遺伝子を導入して細胞周期を可視化したヒトスキルス胃がん細胞株(HSC43 fucci)を用いて低酸素環境(1%O2)で線維芽細胞由来液性因子を加えると、細胞周期が2週間以上G0期にとどまることが明らかになった。また、20%O2にするとこれらの細胞が再び増殖期に戻ることをタイムラプス顕微鏡撮影で証明した。低酸素環境でG0期にとどまる胃がん細胞の運動の動態解析から運動能はむしろ亢進することが分かった。 4.まとめ:これらのことから考えれば、腹腔内のような低酸素環境下でのスキルス胃がん細胞株は線維芽細胞由来の液性因子によって長期間G0期に維持されるにもかかわらず、運動能はむしろ亢進する、ということが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
最終年度(平成28年度)を残して、3つの研究目的はおおむね達成している。 1.胃がん切除組織における IC factor の有無とその他の微小環境因子の解析 2.胃がん症例の臨床病理学的解析と前向き生存解析による胃がん治療戦略の確立 3.CAFs-胃がん細胞間相互作用の細胞生物学的解析(浸潤能・増殖能・薬剤耐性の評価)
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今後の研究の推進方策 |
本研究の成果として、がん組織中線維芽細胞(いわゆるがん関連線維芽細胞)が老化した際に分泌されるSenescence associated secretory phenotype (SASP)が低酸素環境特異的に胃がん細胞の細胞周期に影響を与えることは特に重要である。これにより切除胃がん組織でのEphrin familyの異常発現による再発(微小転移)リスク評価に加えて、血液中の液性因子で再発兆候をとらえられる可能性が示唆される。一方、SASPは様々な分子の集合体(総称)でもある。微小転移増殖に直接的に働く因子の同定が最終年度の目的であると考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
微小転移(再発)リスク因子同定が予測よりも順調に進み、見込みよりも少ない研究試薬で目的を果たすことができた。
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次年度使用額の使用計画 |
SASP因子の同定には大量のタンパク精製に用いる試薬や器材、プロテオーム解析にかかる費用、浸潤能の定量解析には細胞外基質やセルカルチャーインサートなどの特殊培養器材などが今後必要である。
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