研究課題/領域番号 |
25460467
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研究機関 | 川崎医科大学 |
研究代表者 |
森谷 卓也 川崎医科大学, 医学部, 教授 (00230160)
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研究分担者 |
紅林 淳一 川崎医科大学, 医学部, 教授 (10248255)
鈴木 貴 東北大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (10261629)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 病理学 / 人体病理学 / 乳癌 / 浸潤 / 免疫組織染色 / 診断病理学 / 筋上皮細胞 / 基質 |
研究実績の概要 |
[目的]乳がんの初期浸潤における形態的特徴と、癌進展や予後との関連について探索する。[材料と方法]最大浸潤径が5mm以下の初期浸潤癌78例について、5種類の免疫染色マーカー(p63,uPAR,PAI-1,MMP-2,MMP-9)に対し免疫組織染色を施し解析した。 [結果]腫瘍の浸潤径は0.1~5 (平均2.9) mm、リンパ節転移は76例中11例に認められた。p63は筋上皮マーカーであるため,消失していれば浸潤癌と考えた。膨張性増殖パターンを示すものは別途EPC(被包型乳頭癌)と分類した。uPARは非浸潤癌部で72/73例、浸潤癌部では58/64例で、PAI-1は,非浸潤癌部では69/72例、浸潤癌部では56/61例の癌細胞に発現が見られ、発現スコアはいずれも非浸潤癌で有意に高値であった。MMP-2は54/76例、MMP-9は56/76例の間質に発現を認めた。浸潤癌間質にMMP-2発現を認めた例はPgR陽性率が低く,Ki-67LIが高かった。また、MMP-2, MMP-9ともに浸潤径が大きい例ほど高発現であった。[考察とまとめ] uPARやPAI-1は浸潤前段階での基底膜変性などに関与し、浸潤開始とともにMMPが発現を開始する可能性が示唆された。また、MMPが腫瘍周囲のマトリックスを破壊することで,腫瘍がより増殖するためのスペースを生み出し,増殖能が高まる可能性がある。
今後は症例数と、パラメーターを増やして更に検討を進める。また、三次元立体構築の解析は予備検討が終了し、初期浸潤像をダイナミックに捉えるための検討実施に移行する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成25年度の臨床病理学的な解析結果を基盤として、免疫染色を実施して評価を行った。染色条件の設定と、客観的評価法の確立に予想以上に手間取った。この点はある程度解決できたので、パラメーターの追加と、関連施設を含めて症例追加を試みる予定である。また、三次元立体構築については、臨床検体であるパラフィンブロックをつぶして実施する必要があり、予備検討を行ったため、検体での解析を今後行う予定である。
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今後の研究の推進方策 |
前年度に施行した検討について、有意差を持った結果を得ることができたので、さらに検討のパラメーターを追加することと、症例数を追加することによって、その成果の検証の度合いを高める予定である。最終的に初年度実施した、ヘマトキシリンエオジン染色での研究成果と合わせて、寄り精度の高い病理診断と臨床病理学的な癌の性質の評価関して、適切な社会発信を試みたい。
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