研究課題/領域番号 |
25460468
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 公益財団法人冲中記念成人病研究所 |
研究代表者 |
井下 尚子 公益財団法人冲中記念成人病研究所, その他部局等, 研究員 (20300741)
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研究分担者 |
藤井 丈士 公益財団法人冲中記念成人病研究所, その他部局等, 研究員 (70228948)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 下垂体腺腫 / 病理組織学的検討 / 電子顕微鏡 / 免疫染色 |
研究概要 |
下垂体腫瘍の過半数は機能性内分泌腫瘍で、クッシング病、巨人症など、重篤な疾患の原因となる。電子顕微鏡所見を中心とした煩雑な分類を軸に、ホルモン等に対する免疫染色を加え診断されるが、稀な疾患で臨床情報を含めた多数例の検討がなく、未だ治療法選択に有用ではない。 1.下垂体腫瘍は生検が容易でない。ある種の薬剤では免疫染色結果と治療効果の相関がある程度示唆されているが、手術後の摘出検体を使ってのみ検索可能であり、治療法選択に直接関与できない。今までの蓄積症例を用い、手術前に検索可能な因子を抽出するため、ミスマッチ修復タンパクであるMSH6、転写酵素MGMT、ソマトスタチンやドパミンの受容体、シグナル伝達物質であるmTORなど、いずれも薬物治療に直結した免疫染色を追加検討し、臨床データとともに現在データ解析中である。また、新たに腺腫標本を287症例新規に蓄積することができた。 2.非機能性下垂体腺腫のうち、今までホルモン染色陰性からnull cell adenomaと呼ばれた群に対し、転写因子染色と電顕を含めた追加検討を行った。1000例の連続下垂体腺腫のうちホルモン陰性腺腫は16%、転写因子染色により3例のみが真の意味でnull cell adenomaと分類される群であることが示された。サイトケラチン染色で、染色パターン、細胞内局在の違いを細分化し、電顕所見との比較を行ったところ、ホルモン陰性腺腫についてもそれぞれに特徴的な染色パターンを認識することができ、通常の病理検査室にある染色でも、多くの場合分類可能であることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
25年度については、 1.下垂体腺腫の新たな因子を用いた詳細な検討については、薬物治療効果との相関が示唆される新たな抗体の導入、検討ができたこと、症例の蓄積が進んだことなどから、1年目として検討は十分すすめられたと考える。 2.今までnull cell adenomaといわれてきたホルモン陰性腺腫について転写因子を検索に加えたことで、分化マーカーを用いた分類を可能とし、これらをHE染色主体の病院で検索可能な病理診断に応用する準備が整ってきた。これらを国内外のシンポジウムなどで提示することができた。 以上より、おおむね順調に進展していると考える。
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今後の研究の推進方策 |
1.25年度に検討した項目(null cell adenomaの再分類など)につき、論文として報告するとともに、国内外の学会において広く周知する。 2.今まで形態学的に分類してきた下垂体腺腫の各組織亜型について、miRNAを用いた分子生物学的手法を取り入れ、腫瘍発生系統の確認を行い、形態学的に認められた所見が腫瘍発生後の修飾、化生であるのか、発生時より異なる腫瘍であるのかの確認を行う。具体的にはACTH産生腺腫のうち、Crooke cell adenomaやoncocytic adenomaについて、特に早急に検索をする予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
25年度の研究では、今まで蓄積された症例、病理組織標本の再検討を主体としたため、また論文発表が間に合わなかったため、支出が少なく終わりました。 26年度には、25年度に得られたデータの論文発表を行う。また分子生物学的手法を用いた検討を進めており(miRNAの検討など)、高額試薬、キットの購入がある。パイロット的に行っていた新規免疫染色についても本格的に導入することから、追加抗体、消耗品を購入の予定。 また、26年度に入ってから、実験環境を整えるためのホルマリン固定標本を取り扱う専用の実験台と付属品の購入が現在進行中である。
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