long noncoding RNA (lncRNA)のひとつであるHOTAIRはポリコーム蛋白質EZH2と結合し、EZH2をゲノム上の種々のターゲット遺伝子へとリクルートし遺伝子発現をエピジェネティックに調節することにより発癌に関与していると考えられている。我々は肺腺癌83例におけるHOTAIRの発現をqRT-PCR法で、EZH2の発現をqRT-PCR法および免疫染色で検討し、予後を含む種々の臨床病理学的因子との関連を検討した。その結果、HOTAIRおよびEZH2の発現は肺腺癌の組織学的分化度に関連しており、更に予後と非常に良く関連することがわかった。 別のlncRNAであるMALAT-1の発現はKRAS遺伝子変異を有する肺腺癌でのみ予後と関連していた。またKRAS変異を有する肺腺癌細胞株A549でsiRNAによりKRAS遺伝子発現を抑制すると、有意にMALAT-1の発現が上昇することがわかった。肺腺癌と正常肺でMALAT-1の発現をqRT-PCRで比較すると癌組織、特に早期の肺腺癌で発現が高く、また病理組織標本のin situ hybridizationで、MALAT-1が癌細胞に特異的に染色されることがわかった。この結果はMALAT-1の発現とKRAS遺伝子変異が協調して発癌に関与している可能性を示唆している。 以上の結果はlncRNAが肺癌の診断、予後予測のマーカーとして有用であることを示唆している。
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