研究課題/領域番号 |
25460470
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 独立行政法人国立病院機構(長崎医療センター臨床研究センター) |
研究代表者 |
伊東 正博 独立行政法人国立病院機構(長崎医療センター臨床研究センター), 機能形態研究部, その他 (30184691)
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研究分担者 |
中島 正洋 長崎大学, 学内共同利用施設等, 教授 (50284683)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 甲状腺癌 / 放射線 / チェルノブイリ / 遺伝子不安定 / 低ヨード |
研究概要 |
2011年3月に福島原発事故が発生し周辺地域で甲状腺がん発症への不安が高まっているが、被曝形態や食事性ヨード環境はチェルノブイリ周辺地域では大きく異なっている。チェルノブイリ事故から28年が経過し周辺地域での甲状腺癌の発生は小児から成人にシフトし依然高い発生率が見られる。チェルノブイリ組織バンクには平成25年度は408症例の登録が追加され、これまでに4,696例の組織登録が完了し、今年度から推定個人被曝線量が登録されるようになる。国内では原爆被爆関連甲状腺がん症例の登録が進んでいる。形態学的には被曝甲状腺癌には一つの決まった特徴はなく、被曝形式により形態学的にも分子生物学的にも多様な形態を呈することを報告した。低ヨード環境は小児甲状腺癌の発生頻度の上昇、潜伏期の短縮、充実性形態変化に影響を及ぼしていることが推察された。低ヨード環境の影響を見る目的で、非被曝成人症例の国際比較検討を行っている。今回、本邦とチェルノブイリ周辺地域の被曝歴のない成人の甲状腺乳頭癌症例を用いて臨床病理組織学的検討を行った。その結果、チェルノブイリ症例では小児、成人とも充実性成分を有する症例が多くみられ、ヨード環境や遺伝的背景の差が形態形成に差をもたらすこと、放射線感受性を考える上で環境因子の考慮が必要であることが報告した。これらの生体試料を用いゲノムDNA解析がなされてきたが、放射線特異的な遺伝子変異は見いだされていない。共同研究者とDNA修復・遺伝子安定性維持機構の損傷の解析、microRNA解析を継続的に進め、DNA損傷応答遺伝子の多型性が甲状腺癌発症リスクになっている可能性を報告している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
(理由)著書の発刊、英文論文や総説の発表、学会発表ができたことが、研究が遂行された結果と云える。さらにチェルノブイリ組織バンクの症例集積は順調に進み、25年度には408症例の生体試料採取とデータの登録が完了できた。約2400症例のウクライナ症例の形態解析を行い著書として報告した。さらに被曝歴のない成人症例において本邦とチェルノブイリ症例の臨床病理学的な解析を行い、学会発表を行い、現在論文の投稿中にある。
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今後の研究の推進方策 |
福島第一原子力発電所の事故が発災し、放射線被曝による甲状腺発癌リスクに関する関心が高まっている。チェルノブイリ組織バンクと連携し生体試料の収集を引き続き行う。症例の画像はバーチャルスライド化や推定被曝線量が今年度から実施される。個人推定被曝線量、病理形態、解析された遺伝子変異がデータバンクに集積され、これらのデータを活用しつつ、放射線関連の新たな遺伝子変異を展開していく。
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次年度の研究費の使用計画 |
試薬やその他の消耗品類の購入費が予想を下回ったために22万173円の余剰が発生した。理由の一つとして、共同購入や在庫試薬の利用で支出の抑制ができたことがあげられる。同時に、使用確定のしていない試薬の予備的購入は控えた。この分は次年度に使用できるメリットとして捉えている。 試薬や新たな抗体、プローブの購入費に充てる予定にしている。
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