研究課題
基盤研究(C)
特定の組み合わせの転写因子を導入することにより線維芽細胞から神経や肝臓などの細胞を作製できることが報告されている。本研究課題においてはリンパ管内皮細胞を誘導する因子を同定し,線維芽細胞に導入することでリンパ管内皮細胞を作製することを試みる。さらに得られた細胞(induced lymphatic endothelial cell: iLEC)の遺伝子発現や機能を培養細胞レベルならびに個体レベルで検証し、リンパ浮腫の再生療法を試みることを目的とする。平成25年度はリンパ管内皮細胞の増殖に対する骨形成因子(bone morphogenetic protein: BMP-9)の役割を検討し、リンパ管内皮細胞の増殖に対してTGF-βファミリーメンバーである骨形成因子(BMP9)が抑制的に機能することを、ヒト皮膚由来リンパ管内非細胞(human dermal lymphatic endothelial cell: HDLEC)やBMP9遺伝子欠損マウスやその受容体(ALK1)遺伝子欠損マウスなどを用いて詳細に解析し、PNAS誌において発表した。以上の研究成果はリンパ管の形成機構をより詳細に解明することにより、リンパ性浮腫やがんリンパ節転移の治療につながるという点で意義は大きいとともに、iLECの培養においてBMP-9シグナルを阻害することが有効であることが示唆された点で本研究課題へ貢献したと考えられる。
2: おおむね順調に進展している
本申請課題においては(1) リンパ管内皮細胞の増殖を制御する因子の同定、(2) リンパ管内皮細胞分化誘導因子の同定、(3) iLECの性状解析、(4) iLECによるリンパ管組織の再構築と機能の補助などを計画している。従来の計画で、平成25年度において(1)を完成させる予定であった。その点では論文が発表できたということは十分満足な達成度であると考えている。(2) リンパ管内皮細胞分化誘導因子の同定については現在は12種類のレトロウィルスを使用してiLECを作製しているが、導入する転写因子の数を減らすことにより、リンパ管内皮細胞へとリプログラミングするために必要最小限の転写因子の組み合わせを同定する予定である。以上を総合して考えて、本申請課題は「おおむね順調に進展している」と考える。
平成26年度以降は主に(2) リンパ管内皮細胞分化誘導因子の同定、(3) iLECの性状解析ならびに(4) iLECによるリンパ管組織の再構築と機能の補助を計画している。(2) リンパ管内皮細胞分化誘導因子の同定については現在は12種類のレトロウィルスを使用してiLECを作製しているが、導入する転写因子の数を減らすことにより、リンパ管内皮細胞へとリプログラミングするために必要最小限の転写因子の組み合わせを同定する予定である。(2)が十分な成果が得られ次第、(3)以降を順次進めていく計画である。
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Biochemical Journal
巻: 452 ページ: 345-357
10.1042/BJ20121200
Proceedings of the National Academy of Sciences of U.S.A.
巻: 110 ページ: 18940-18945
10.1073/pnas.1310479110