研究実績の概要 |
以下の3点について報告する。1. SASS6は中心体制御に関わる遺伝子であるが、癌における遺伝子異常はこれまで報告されていなかった。我々は、今回、原発性大腸癌の6割程度においてSASS6のmRNA発現および蛋白質発現が上昇していることを明らかにした。また、DLD-1大腸癌細胞株のSASS6の安定発現誘導株を用い、SASS6高発現が、中心体過剰複製、M期異常(染色体不整整列、ラギング染色体)、染色体数的変化を誘導することを示した。がんゲノムアトラス(TCGA)のデータを用いても、大腸癌でのSASS6 mRNA高発現が示され、またその高発現は患者予後不良因子となることが示された。さらに、多くの癌の種類(8/11種)でSASS6はmRNAレベルでの高発現を示し、淡明細胞型腎細胞癌と肺腺癌では予後不良因子になることも示された。以上より、SASS6高発現は大腸癌に関わり、その予後不良因子となることが示唆された。また、SASS6高発現は多くの癌で共通する遺伝子異常である可能性が示唆された。2. 脂質過酸化物に由来するエテノDNA付加体の塩基除去修復機構による修復の可能性を検討した。8種のDNAグリコシラーゼを用いたin vitro での網羅的解析により、TDGが、εC:G塩基対に対する既知の切断活性だけでなく、チミンがεC, BεC, BεG, HεC, HεGと誤対合した場合にチミンの側のDNA鎖を切断する活性も有することが新規に示された。また、TDG knockdownヒト細胞は、対照細胞と比べて、エテノDNA付加体誘導による細胞死に対してより強い抵抗性を示し、εCに対してより低い修復活性を示した。以上より、TDGはヒト細胞において、エテノDNA付加体が関わる誤対合に対して除去修復活性を有することが示唆された。3. DNAグリコシラーゼTDG遺伝子の43個のnonsynonymous SNPをPolyPhen-2, SIFT, PROVEANのソフトウェアでin silico評価し、うち6個は活性喪失型と予想される型であることを明らかにした。
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