研究実績の概要 |
以下の3点について報告する。1. WD Repeat Domain 62(WDR62)は中心体等に局在し、細胞周期の進行、中心体制御等において重要な役割を果たすことが報告されている。また、WDR62遺伝子の生殖細胞系列変異保有者では、小頭症が誘導されることが報告されている。しかし、頻度の高いヒト腫瘍である肺腺癌におけるWDR62遺伝子異常についてはこれまでに報告がないため、本研究ではその発現異常の有無の点からWDR62を調べた。WDR62は肺腺癌部で有意に発現が上昇しており、また、2以上のT/N比を示す症例は全体の48.4%も認められた。また、病期Stage III/IV群はI/II群に比べて有意に発現が高かった。また、免疫組織化学染色によるWDR62蛋白質発現レベルの検討の結果、WDR62が蛋白質レベルにおいても過剰発現していることが示された。これらのことから、肺腺癌ではWDR62が高発現していることが示唆された。2. 8-ヒドロキシグアニンなどの酸化的損傷塩基の除去修復に関わるMUTYHは、OGG1とdouble knockoutさせると、その細胞は、酸化的ストレス誘導下で中心体過剰複製を起こしやすいことが知られている。また、MUTYH関連ポリポーシス(MAP)の原因遺伝子でもある。このMUTYHの日本人由来の9つのミスセンス型塩基variantについて機能解析(DNA切断分析およびsupF前突然変異分析)を行い、p.N238Sとp.R247Gが野性型と比べて活性が低いことから、MAP病原性アレル候補であることが示唆された。3. DNAグリコシラーゼNEIL1, NEIL2, NEIL3遺伝子のヒトの各種癌における発現異常が癌ゲノムアトラスのデータを用いた解析により、体細胞変異数と関連性を示すことが明らかになった。
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