研究課題/領域番号 |
25460477
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
大北 裕 神戸大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (40322193)
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研究分担者 |
川本 篤彦 公益財団法人先端医療振興財団, その他部局等, その他 (00275330)
藤田 靖之 公益財団法人先端医療振興財団, その他部局等, 研究員 (00590465)
浅原 孝之 東海大学, 医学部, 教授 (20246200)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 胸腹部大動脈手術 / 脊髄虚血 / CD34陽性細胞 / 血管内皮前駆細胞 |
研究実績の概要 |
C.B-17/Icr-scid/scidJclマウス(SCIDマウス)即時型対麻痺モデルに対するヒトCD34陽性細胞移植の検討:Ischemic preconditioning 30秒、10.5分虚血の条件で、即時型対麻痺モデルを用いた。モデルの検討時に対麻痺の発生は、再灌流後6時間から12時間でBMSスコア≤4点であるマウスは全例対麻痺を発生したことから、細胞あるいはPBSの投与のタイミングは再灌流後8時間と設定した。投与後、40時間(再灌流後48時間)における脊髄組織を観察したところ、DiIでラベリングされた移植細胞が虚血障害部位に多数集簇を認めた。細胞の局在は、BS-1 lectin で染色された血管にとどまらず、血管外にも多数観察された。しかし、この時点で、細胞移植群、PBS投与群ともに、Nissl染色による脊髄前角細胞は既に消滅していた。また、障害は後角にまで波及し、Rexed IおよびII相に至るまで神経細胞の著明な減少が認められた。移植後14日までで、細胞移植群とPBS投与群でのBMSスコアの推移および生存率に差異は認められなかった。 今後の計画:SCIDマウスでは、C57BL/6マウスとは異なり、遅発型対麻痺が発生せず、また、発生した即時型対麻痺では脊髄障害程度が著しく高度で、ヒトCD34陽性細胞の移植による対麻痺改善効果を検証するには、本モデルの虚血重症度が高すぎるものと考えられた。一方、B6マウスでは、遅発型および即時型対麻痺モデルともに作成可能であること、また、B6マウスに免疫抑制剤を併用してヒト由来細胞を移植し、有効性を示した報告が多数あることから、現在、B6マウスを用いた脊髄虚血モデルに変更し実験を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
①C.B-17/Icr-scid/scidJclマウスでは、C57BL/6マウスとは異なり、遅発型対麻痺が発生せず、また、遅発型対麻痺発生もより長い虚血時間を要した。実験的脳虚血モデルの解析では、T細胞が脳虚血の病態の悪化に関係することが報告されている(Jander et al. 1995, Yilmaz et al. 2006)ことから、脊髄虚血においても同様の可能性が示唆される。また、マウスの系統の差異により上記結果に至ったことも否めない。今後、検討が必要と考えられる。 ②C.B-17/Icr-scid/scidJclマウス即時型対麻痺モデルは脊髄障害程度が著しく高度で、再灌流後早期に、脊髄前角細胞が消失し、再灌流後の生存率がC57BL/6マウスに比して、著しく不良であった。ヒトCD34陽性細胞の移植による対麻痺改善効果を検証するには、本モデルの虚血重症度が高すぎるものと考えられた。 ③一方、C57BL/6マウスにおいては、遅発型対麻痺および即時型対麻痺モデルともに作成可能であること、また、C57BL/6マウスにおいても免疫抑制剤を併用してヒト由来細胞を移植し、有効性を示した報告が多くなされている。
以上により、当初、計画していた免疫不全モデルでは、ヒトCD34陽性細胞の脊髄虚血に対する治療効果を検証することは極めて困難であることから、現在、C57BL/6マウスを用いた脊髄虚血モデルに変更したことから、当初の実施計画より研究は遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
C.B-17/Icr-scid/scidJclマウスを用いた脊髄虚血モデルでは、遅発性対麻痺は発生せず、また、即時型対麻痺は発生するものの、発生した即時型対麻痺は脊髄障害程度が著しく高度で、再灌流後早期に、脊髄前角細胞が消失し、再灌流後の生存率がC57BL/6マウスに比して、著しく不良であった。ヒトCD34陽性細胞の移植による対麻痺改善効果を検証するには、本モデルの虚血重症度が高すぎるものと考えられた。一方、C57BL/6マウスにおいては、遅発型対麻痺および即時型対麻痺モデルともに作成可能であること、また、C57BL/6マウスにおいても免疫抑制剤を併用してヒト由来細胞を移植し、有効性を示した報告が多くなされていることから、現在、C57BL/6マウスを用いた脊髄虚血モデルに変更し、さらに実験を進めている。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究分担者 川本篤彦のH26年度請求分300,000円について、研究進捗状況が当初の予定よりも遅れているため細胞移植段階で必要となる物品購入がなされなかったことと、研究発表をH26年度は見合わせた事から、当該215,620円を次年度(H27年度)に繰り越すこととなった。
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次年度使用額の使用計画 |
H26年度中に施行する予定であった細胞移植実験および解析をH27年度中には施行し、学会発表を行う予定であるため、繰り越し分215,620円を物品購入および学会旅費・参加費に使用する予定。
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