研究実績の概要 |
1) SCIDマウス即時型対麻痺モデルに対するヒトCD34陽性細胞移植の検討:傍脊柱筋温度37.5℃下Ischemic preconditioning 30秒、10.5分脊髄虚血の条件で即時型対麻痺モデルを作成した。再灌流後6~12時間で後肢運動機能スケールBasso Mouse Scale (BMS)≦4点であるマウスは全例対麻痺を発生した為、細胞(またはPBS)投与は再灌流後8時間と設定した。投与後40時間(再灌流後48時間)に脊髄組織を観察したところ、標識した移植細胞が虚血障害部位の血管内にとどまらず、血管外にも多数局在することを確認した。しかし、このモデルでは両群とも脊髄前角細胞は消滅していた。移植後14日までの細胞移植群とPBS投与群でのBMSスコアの推移および生存率に差異は認められなかった。現在、軽症モデル作成、投与タイミングおよび移植細胞種の更なる検討を継続中である。 2) 脊髄虚血再灌流障害における免疫細胞の関与:SCIDマウスでは、C57BL/6マウスとは異なり、遅発型対麻痺が発生せず、また、即時型対麻痺発生により長い虚血時間を要した。SCIDマウスおよびSCIDマウスと同系統でImmunocompetentのCB-17/Icr (IC) マウスに対し脊髄虚血を作成し、再灌流後12, 24, 48, 72時間および7日後のBMSおよび脊髄免疫組織学的評価を行った。両マウスとも10.5分脊髄虚血では即時型型対麻痺を発生した。生存脊髄前角細胞数はICマウスでは、SCIDマウスに比較していずれの観察時点においても少ない傾向を認め、ICマウスでは脊髄組織へCD3陽性T細胞およびCD21陽性B細胞がわずかに浸潤していたが、SCIDマウスでは認められなかった。また、Microgliaの浸潤は、両群とも再灌流後12時間にピークが認められ、ICマウスでMicroglia数が多い傾向が認められた。T細胞およびB細胞よりもむしろMicrogliaが即時型対麻痺発生に関与している可能性を示唆するものであった。
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