悪性腫瘍はCCL2やIL-10などの生理活性物質を介して腫瘍組織内にM2マクロファージを誘導し、自身の増殖に有利な環境を構築する。高悪性度腫瘍として知られる神経内分泌癌は多数のアポトーシスとM2マクロファージの浸潤を示す。アポトーシス細胞はマクロファージのM2分化を誘導するため、これらの高悪性度腫瘍ではアポトーシスにより誘導されたM2マクロファージが腫瘍の増殖に有利な環境を提供して生物学的悪性度を増強している。具体的にM1マクロファージがM2マクロファージへと転換されるためにアポトーシス細胞から放出されるメディエーターとして考えられているのがスフィンゴシン1リン酸(S1P)である。このアポトーシス→S1P→M2マクロファージ誘導→生物学的高悪性度の分子機構を明らかにすると同時に、腫瘍の増殖を助長するM2マクロファージ分化阻害による腫瘍増殖制御が本研究の目的である。 平成26年度は神経内分泌癌の腫瘍細胞株であるSHP-77単独培養系と単球由来ヒトマクロファージとの共培養系を用いてアポトーシスの誘導能とマクロファージのM2分化誘導能、細胞増殖能を検討した。M1マーカーCD169とM2マーカーCD204を用いての免疫組織化学、および定量的RT-PCRによるIL-10/IL-12の増減においてはマクロファージの有意な形質変換を示すデータは得られなかった。細胞株として確立されたTHP-1は形質変換能が低下している可能性が考えられたため、健常者から採血したプライマリーの単球により、再検討することに変更した。
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