ミッドカイン制御型腫瘍溶解アデノウイルス(MOA5)に以下の3種類のアデノウイルスファイバーの改変を加えたウイルスの作製を継続した。(1)CD46標的化(5/35型ファイバー置換型:MOA5/35)、(2)EGFR標的化(MOA5/EGFR)、(3)HER2標的化(MOA5/HER2)。これら3種類のウイルスのうち、MOA5/EGFRについてはHEK293細胞でウイルスの大量調整を5度試みたが、結果的に高いウイルス力価を持つものを作製できなかった。作製したファイバーを組み込んだウイルスゲノムサイズが大きく効率的にパッケージングされないことが判明した。ウイルスの大量調整に成功したMOA5/35及びMOA5/HER2については、改変前のMOA5に比べ、それぞれ低CAR発現細胞株及び低CAR/HER2陽性細胞株に置いて感染導入効率と細胞障害性の増強が得られた。皮下腫瘍モデルにおける抗腫瘍効果の検討でも、同様の効果が確認できた。 播種性癌に対する効果検討するためのモデルとして、in vivo イメージングが可能な播種性癌致死マウスの作製に成功した(悪性中皮腫3細胞株、骨肉腫2株、大腸癌2株)。このうち悪性中皮腫細胞株MSTO-211Hを用いたモデルにおいて、MOA5/35の治療効果を検討する実験を繰り返したが、腫瘍の縮小を認めた個体が存在するものの、群としては有意な抗腫瘍効果及び生存期間延長効果を示すことができなかった。この主たる原因の一つとして、複数(~無数)の全腫瘍にあまねく治療ウイルスを到達・感染させることが増殖型ウイルスを持ってしても困難であることが考えられた。そこで免疫賦活因子(インターフェロンなど)や血管新生抑制因子などと併用することで抗腫瘍効果をさらに増強させる治療戦略が必要と考え検討を重ねたところ、血管新生抑制作用を持つエンドスタチン及びNK4などが有効であることを見出し、これら併用療法の研究を進めている。
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