消化管間質腫瘍(Gastrointestinal stromal tumor [GIST])は消化管蠕動運動に関与するカハールの介在細胞に由来する腫瘍である。大部分のGISTでは受容体型チロシンキナーゼKITあるいはPDGFRAのドライバー変異を有する。従って切除不能、転移・再発GISTに、チロシンキナーゼ阻害薬imatinibが著効する。しかし、imatinib耐性GISTの克服が課題である。Imatinib耐性GISTの現在の治療は、別のキナーゼ阻害薬sunitinibやregorafenibへのswitchである。しかし、これらに対する耐性GISTの出現も予想される。本研究ではimatinib耐性GISTの克服のためにエピゲノム治療の可能性に注目し、主として以下の3つの成果を挙げた。第一に、GISTではグローバルな5-hydroxymethylcytosine (5hmc)の低下が一般的でなく、「腫瘍では一般的に5hmc低下あるいは陰性」との既報告が必ずしも一般ではないことを明らかにした。第2に耐性GISTではグローバルな5-methylcytosine(5mc)の低下が見られ、DNAメチル化阻害薬が有効である根拠に乏しいことを明らかにした(以上の成果の一部は第102回日本病理学会にて発表した)。第3に、グローバルな5mcの低下に伴い発現誘導される遺伝子として、免疫checkpoint分子PD-L1の発現誘導の可能性を考えた。実際に大部分のimatinib耐性GISTでは、腫瘍内外血管内皮細胞にPD-L1発現が誘導された。これはimatinib治療前GISTに見られないものである。Imatinib耐性GISTでは、腫瘍への免疫細胞の侵入門戸である血管内皮にPD-L1が発現するというユニークな免疫抵抗性機構を有することがはじめて明らかとなり、血管を標的とするPD-1/PD-L1免疫療法によりGISTのimatinib耐性を克服できる可能性が示された。以上の成果は論文投稿準備中である。
|