研究課題
申請者はこれまでに、マウス同種造血幹細胞移植(allo-HSCT)モデルの解析から、GVHDが骨髄造血ニッチを障害することでリンパ球系の再構築を抑制すること、さらにリンパ球の再構築抑制とは独立して液性免疫不全を誘導すること、リンパ球再構築後も液性免疫不全が遷延するマウスでは、液性免疫誘導に中心的な役割を果たすリンパ節が重度かつ不可逆的に萎縮していることを見出した。本研究では、これまでGVHDの標的臓器として認識されていなかったリンパ節に着目し、マウスallo-HSCTモデルを用いて、GVHDによるリンパ節障害の詳細を免疫学的、組織学的、機能的に解明するとともに、病態形成の細胞・分子機序を解明し、移植後免疫不全の予防・治療法開発の基礎を築くことを目的とした。昨年度までに、allo-HSCT後にドナーCD8+T細胞依存的にリンパ節が破壊されることで、液性免疫不全が遷延することが示唆された(LN GVHD)。今年度は、ドナーCD8+ T細胞の標的となるリンパ節構成細胞を、フローサイトメトリーおよび免疫組織染色により詳細に解析した。リンパ節の機能的構造を構成する代表的な非血球系細胞として、血管内皮細胞、高内皮細静脈細胞、リンパ管内皮細胞、線維芽細胞様細網細胞(FRC)などがあげられる。CD8+ T細胞依存的なGVHDを誘導したマウスでは、移植後7日目以降、観察期間を通じてFRCの著明な減少を認める一方、その他の非血球系細胞画分は、移植後14日目まで著明なな数的変動を認めなかった。また、リンパ節の破壊を誘導しない、CD4+ T細胞依存的なGVHDを誘導したマウスでは、FRCの減少を認めなかった。これらの結果から、LN GVHDにおける主要な標的がFRCであることが明らかになった。今後、CD8+ T細胞によるFRC傷害の分子機序の解析を進め、新規予防・治療法の開発を目指す。
2: おおむね順調に進展している
当初の目標として、GVHDによるリンパ節障害の詳細を免疫学的、組織学的、機能的に解明するとともに、病態形成の細胞・分子機序を解明し、移植後免疫不全の予防・治療法開発の基礎を築くこと、としていた。H26年度までに、リンパ節障害を誘導するエフェクター細胞としてドナーCD8+ T細胞を、ターゲット細胞として線維芽細胞様細胞細胞(FRC)を同定し、リンパ節における免疫担当細胞間相互作用を指示するFRCが、GVHD発症時にCD8+ T細胞により障害されることで、液性免疫の動作不全に陥ることを明らかに出来た。今後、選択的なFRC傷害の分子機序を解明することで、GVHDにおけるリンパ節障害の予防に繋がると期待している。
FRC障害の予防標的を同定するため、FasL-Fas細胞傷害経路に加え、その他のアポトーシス関連分子、細胞増殖抑制因子IFNg, TNFaやその他の炎症・免疫関連分子の関与をin vivoおよびex vivoで検証する。また、障害を受けたリンパ節への線維芽細胞や間葉系幹細胞などの 移植や、in vitroで作成したリンパ節原基の移入による人工リンパ節の誘導など、再生医療的アプローチによるLN GVHDの治療の可能性を検討する。
2015年3月上旬に予定していた海外出張の直前に身内に不幸があり、出張をキャンセルしたため、旅費、学会参加費などの払い戻しが生じた。既に新規の発注を控えるよう指示が出ていたため、新規に実験を組むなどの追加計上をせず、繰り越すことにした。
繰り越し額は、新たに立案した分子機序解析のための遺伝子発現解析に用いる試薬、動物購入などに充てる予定である。
すべて 2015 2014 その他
すべて 雑誌論文 (7件) (うち査読あり 7件、 謝辞記載あり 3件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (3件) 備考 (1件)
Cancer Immunol Res
巻: 印刷中 ページ: 印刷中
in press
Circ Res
巻: 116 ページ: 612-623
doi: 10.1161/CIRCRESAHA.116.304918
J Immunol.
巻: 194 ページ: 398-406
doi: 10.4049/jimmunol.1401022.
巻: 3 ページ: 26-36
doi: 10.1158/2326-6066.CIR-14-0098.
Sci Rep
巻: 4 ページ: -
doi: 10.1038/srep06030.
J Immunol
巻: 193 ページ: 1636-1644
doi: 10.4049/jimmunol.1302946.
Proc Natl Acad Sci U S A.
巻: 111 ページ: 7771-7776
doi: 10.1073/pnas.1402914111.
http://www.prevent.m.u-tokyo.ac.jp/