研究課題/領域番号 |
25460492
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
馬場 智久 金沢大学, がん進展制御研究所, 助教 (00452095)
|
研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
|
キーワード | 慢性骨髄性白血病 / 白血病前駆細胞 / 骨髄 / 細胞競合 |
研究概要 |
本年度は、慢性骨髄性白血病(CML)発症初期過程において、ごく少数出現したCML原因遺伝子(BCR-ABL)陽性白血病前駆細胞(LIC)が、骨髄内においてどのように増殖していくのか、さらには共存する多数の正常造血細胞との細胞間相互作用を詳細に観察するために、一般的なX線照射マウスを用いたCMLモデルを改良し、X線非照射マウスCMLモデルの作製を試みた。 マウス造血幹・前駆細胞(HSPC)に、常法に従いBCR-ABLをレトロウイルスベクターを用いて遺伝子導入し、LICを作製した。これをX線非照射条件下で、移植片拒絶反応を回避するために、免疫不全ヌードマウスの骨髄内に直接移植することで、正常な造血機能を背景にCML様の白血球増殖性腫瘍を発症させることに成功した。さらに、本マウスモデルを用いてCML病態生理を詳細に解析することで、以下の点を明らかにした。 ①CML発症初期過程において、炎症性ケモカインCCL3の血清濃度が一過性に上昇した。②CCL3は主にBCR-ABL陽性未分化CML細胞から産生される。③骨髄内で過剰産生されたCCL3は正常なHSPCに選択的に作用し、これらを骨髄内から末梢血中に誘導する作用がある。またこの作用から、CML細胞はCCL3を過剰産生することで、LICの維持・増殖に必要な骨髄内における限られたスペースを確保している。④CCL3シグナルを阻害した環境下では、正常なHSPCが、骨髄内でLICの維持・増殖を直接的に抑制する。 本研究から明らかにしたCCL3を介した正常HSPCとLICの競合拮抗作用は、この細胞分子機序の阻害による新たなCML治療戦略につながる可能性を強く示唆しており、世界的に注目されている。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
申請書の研究計画に記載した、25年度予定のX線非照射マウスCMLモデルの作製とそれを用いたCML細胞と正常造血細胞の動態・相互作用の観察については、予定通り遂行することができた。さらには、CML発症初期過程の詳細な観察から、炎症性ケモカインCCL3がCML細胞から過剰に産生されていることを明らかにした。この知見を踏まえ、26年度以降に計画していた、発現変動を示した遺伝子群のCML病態への関与の検討としてCCL3の病態生理学的役割を解析し、骨髄内微小環境における白血病前駆細胞のCCL3過剰産生を介した優位性増殖メカニズムを明らかにすることができたため、計画以上に研究が進行したと評価した。
|
今後の研究の推進方策 |
申請書の26年度以降の研究計画に記載した通り、CMLの病態生理学的関与が明らかになった遺伝子群として、25年度明らかにした炎症性ケモカインCCL3の役割について、さらに詳細な細胞分子生物学的解析を行う。さらに、CCL3の特異的なレセプターであるCCR5に対しては、すでに低分子阻害剤(マラビロク)が開発されており、すでに入手済みである。したがって、本年度は、CMLマウスモデルを用いて、本阻害剤によるCML治療効果の検討を予定している。また、CMLの標準的治療薬Imatinibとの併用効果についても、合わせて検討を加える。
|