研究課題
昨年度までに、慢性骨髄性白血病(CML)の発症初期過程の骨髄内において、白血病細胞から高レベルに産生される炎症性ケモカインCCL3が、選択的に正常造血幹・前駆細胞(HSPC)に作用することで、間接的に白血病幹細胞(LIC)の優位な増殖をサポートしていることを明らかにした。また、正常HSPCに対するCCL3の作用を詳細に解析したところ、骨髄移植後の血球再構築過程で誘導されるHSPCの増殖に対して、負のフィードバック作用を持つことを明らかにした。すなわち、このCCL3による選択的な正常HSPCに対する抑制作用が、LICと正常HSPCとの間における細胞間競合拮抗メカニズムの主体となり、CML病態を増悪させている可能性が強く示唆される。これらの解析結果を踏まえ、本研究課題の最終年度は、このCCL3による細胞間競合拮抗を分子標的としたCMLの新規治療戦略を検討するため、CCL3とCCL3レセプターであるCCR5との結合阻害剤であり、抗HIV薬としてすでに認可されているマラビロクを投与することで、以下の結果を得た。①CML発症前にマラビロクを経口投与するとCML病態(末梢血白血球数、脾腫、骨髄内のLICの数)が明らかに減弱した。②CML発症後にマラビロクを経口投与しても顕著な治療効果は認められなかった。以上の結果から、CCL3を分子標的とした薬剤の投与により、CMLの発症・進展を効果的に予防できることを明らかにした。このことから、一般的なCML治療薬であるチロシンキナーゼ阻害剤などと併用することによって、CML治療効果を増強できる可能性が期待される。
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Blood
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Cancer Lett
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10.1016/j.canlet.2015.06.009.
http://ganken.cri.kanazawa-u.ac.jp/bunsiseitai/JapContent.html