研究課題/領域番号 |
25460493
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
浅井 真人 名古屋大学, 医学(系)研究科(研究院), 特任講師 (70543536)
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研究分担者 |
榎本 篤 名古屋大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (20432255)
浅井 直也 名古屋大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (80273233)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 側頭葉てんかん / モデルマウス / 実験病理学 / てんかんビデオモニタリング / 睡眠てんかん |
研究実績の概要 |
側頭葉てんかんは海馬とその周辺を焦点とするてんかんの一種で薬剤で治らない成人のてんかんの最多の原因を占める。側頭葉てんかん患者では発作中夢うつつに行動する自動症が特徴である。この自動症がてんかん患者の運転する車の暴走、店のレジをお金を支払わず通過する事故などを引き起こす。薬剤で治らないため外科的に海馬を切除する治療が行われているが後遺症もあり、また完治しないことも多い。このように治療法開発が進んでいない最大の原因は適切な動物モデルが無かったことである。薬剤や電撃でマウスをてんかんにするキンドリングという方法は古くから知られているが、作成中にマウスが死んだり海馬以外に障害をおこしたり、反対にてんかんが長続きしなかったりして薬剤を試すには様々な問題があった。我々の研究室で偶然発見したマウスは離乳後全個体が例外なく海馬を起源としたてんかんを頻繁におこし特徴的な病理所見である海馬硬化や歯状回顆粒層分散を左右両側の海馬におこす、さらに海馬以外に障害がなく理想的な側頭葉てんかんモデルと分かった。このマウスを何ヶ月もビデオモニタリングして発作が全般化した大発作だけをカウントすることで臨床ですでに使われている側頭葉てんかんの既知の治療薬がこのマウスにおいても有効であることが確かめられた。マウスとモニタリングを含むシステムは国内特許出願(特願2014-210085号)し、企業1社と秘密保持契約を完了。外国出願のため2015年4月15日JST外国出願支援制度に申請完了。執筆論文は関連遺伝子のリン酸化抗体の性能検定を扱ったもので、2015年3月11日学術誌Biochemical and Biophysical Research Communicationsに掲載された。現在も発作と深い関係があった睡眠解析で筑波大学と、新たに同定されたヒト遺伝子変異でケンブリッジと共同研究を行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
側頭葉てんかんの単遺伝子変異によるモデルは2015年になってもまだ研究の世界でも知られていない。国内特許も拒絶理由が解消し、2015年3月19日に意見書と手続き補正書が完了するなど受理に非常に近い段階まで来ており、学内では海外特許申請の手続きに入った。企業との秘密保持契約や技術移転作業が順調であることもこのマウスの非常に高い科学的価値と商業価値を表している。実際、このマウスを用いて8週間に及ぶ薬剤投与実験を成功させた。現在は新規候補薬をモデルマウス4匹に投与してこれを1台のカメラでモニタリングするというさらに効率のよいシステムで候補薬の有効性を判定している。またこれとは別にこの遺伝子の小腸における役割を明らかにし上級雑誌に執筆を終えたところ。本遺伝子が消化管の吸収上皮微絨毛にも存在していることが明らかになり、この機能欠損がノックアウトマウスの栄養障害と関連させられる可能性は、いずれてんかんの原理解明に役立つと思われる。実際小腸微絨毛の機能障害と側頭葉てんかんと遺伝的に関連が過去に報告されている。以上課題は概ね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
このモデルマウスのみならず普遍的なてんかん原因の解明を目指している。その中で候補としているのはアクチン線維への注目である。予備的データからこのモデルマウスがてんかんのみならず小腸機能に異常、とくにグルテン不耐症であるセリアック病があるのではと考えるに至り、イタリアのグループと共同で行った予備的な抗体測定では確かにグルテンを負荷したモデルマウスだけで高い抗体価を示した。未来の大きな方向性を示すと思える。モデルマウスの原因遺伝子のヒトでの家系も海外で同定され確かに生後早期からてんかんをおこすことから、臨床の点でも研究が大きく進展する新たな方向性を示した。今後も臨床に直結し、かつ根源的に基礎的な機構解明を目指し研究を進める予定。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成26年度中に購入する予定だったマウスラインが申請書類の遅れなどで平成27年に購入が遅れていることが原因である。
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次年度使用額の使用計画 |
てんかん実験に用いるマウスライン、画像蓄積用ハードディスクは引き続き必要。てんかんマウス維持の費用(特殊飼料の原料代など)も引き続き必要である。
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